「英語以外の作品はヒットしない」を乗り越えた理由は?

 さて、先ほどのポン・ジュノ監督の言葉が載った記事にはこんな指摘もあった。

《「米国では英語以外の作品はなかなかヒットしない」という定説を乗り越えられたのは、第一にはネットフリックスなどの動画配信サービスで外国語作品に慣れた層が増えたことが大きいだろう。》

 出ました、ネットフリックス!

 アカデミー賞にも話題の作品を送りこんだ。なんと24部門でノミネート。

 そんな、世界を席巻するネトフリだが最近私がもっとも興味深く読んだ記事はこれ。

動画配信サービス拡大 クリエーター争奪戦(毎日新聞2020年2月9日)

《巨大な資金と配信網を持つ「黒船」の参入》の結果、国内のアニメやドラマの制作現場でクリエーターを巡る争奪戦が起こっている。低賃金・長時間労働が課題になってきた業界にとって、ネトフリは劇的だという。

「ネトフリが来る前はできなかったこと」

 フリーアニメーターの話として、

「外資が入ることで契約条件が明確になり、いろいろな人の中から良い相手を選んで仕事をしている。ネトフリが来る前はできなかったこと」

 これだけではない。この方の場合は、

「数年前から米国の著名DJやプロスポーツ選手から直接、仕事の依頼を受けるようになった。質の高い日本のアニメに投資をしたい富豪らが個別に制作者と契約し、ネトフリなどに企画を持ち込む動きが起きている」という。

 もちろんおカネや労働環境以外にも「テレビに比べて表現の制約が少ないことも、作り手としてありがたい」という部分でのクリエーターの喜びを話す人もいた。

 既存のメディアからすればネットフリックスは「黒船」だろうが、クリエーターからすれば明るい話。

 アカデミー賞は韓国映画の『パラサイト』がアジア初の作品賞に輝いたり、注目されたネットフリックスはメディアの構造改革もしそうだったり。

 2020年て、そういうことか。

※こちらの記事は、2020年2月12日(水)に公開されたものです。

記事提供:文春オンライン

2020.02.16(日)
文=プチ鹿島