フランシスコ教皇も悩ます!?
若者の結婚問題
教皇のお話はユーモアたっぷりで、時にブラックで鋭く、せわしない日常に埋もれてしまっている隣人愛の大切さ、人生って捨てたもんじゃない、という希望がじんわり伝わってきます。
カトリック信者の多いイタリア人には特に響くようで、たとえ無神論者であってもフランシスコ教皇に感銘を受け、人生が大転換した特集番組が国営放送などで度々組まれています。
あちこちの集会やミサでは、いつもユーモアたっぷりで笑いが絶えません。子どもからお年寄りまで話や悩みにしっかり耳を傾け、とりわけ貧しい人々や弱者に「神は天国に貧しい人々のための特別席を用意してくれているのですよ」と愛ある言葉を投げかけます。
そして社会問題や環境問題にもたびたび言及し、全員で対策を考えなければならないと訴えます。
2015年に刊行されたフランシスコ教皇の回勅をまとめた「ラウダート・シ」では世界が直面している社会格差、経済格差、機会格差、環境問題、家族崩壊などの根本原因は「無関心のグローバル化」であると警告しています。
スローフード運動の創始者カルロ・ペトリーニが解説を書いており「世界がいかに悲惨な状態であるかを冷静に捉え、今人類が緊急に何をなすべきかを信念と叡智を持って語っている」と信者ではなく、一読者の立場として同書を絶賛しています。
教皇にとっても一番の難題
それは「結婚」問題?
現在、イタリアでも結婚率、出生率が低く、離婚率も高いです。
2018年ローマ司教館で行われた信者向け説法で「どうしたら若者に愛や結婚を信じるよう指導できるでしょうか」と男性信者からの質問に、フランシスコ教皇は考えあぐねた様子でこう答えています。
「本当に悩ましい現実です。今はみな、”とりあえず”生きているのです。何も決めず、覚悟もせず。どこに行きたいのでしょうか。何を怖がっているのでしょうか?
アルゼンチンの北東部はとりわけ結婚への迷信が強くて、カップルに子どもが授かっても結婚しない。子どもが小学生に上がるとなんとか人前結婚式をあげ、うまくゆけば晩年にようやく教会で式をする。
なぜかって? 神の前で誓うのは"婿殿が怯える"からです。教会はこんなことも理解してあげないといけないので大変です」
現実にもありがちなエピソードもたっぷりの愉快な説教で、会場はいつも笑顔がいっぱいです。
2019年11月25日(月)の東京ドームのミサではどんな話が飛び出すのか?
イタリアに住む日本人にとって、とても楽しみです。
大平美智子(おおひらみちこ)
イタリア専門コーディネーター&ライター
美術大学卒業後、グラフィックデザイナーを経て渡伊。四半世紀過ぎた今でもイタリア文化への心酔は変わらず美術、美食、イタリア流ホリスティックライフをテーマに雑誌、テレビなど各媒体でイタリア情報発信中。
2019.11.23(土)
文=大平美智子