明るく自由な教皇についたあだ名は
「ロックンロール教皇」

 「貧しきものを忘れず、清貧、平和、従順を貫いたアッシジの聖フランシスコに寄り添って参ります」と就任演説で語ったフランシスコ教皇。

 故郷ブエノスアイレスで大司教だった時代は、豪華な司教館に寝泊まりせず、ほかの修道僧との共同生活を好み市バスで移動するなど、質素なライフスタイルを貫いてきました。

 就任後も変わらず「貧しいもの、弱いものに寄り添う」という一聖職者スタイル。豪華なビロードの衣装より純白の普段着を好み、教皇印たる指輪は純金を断りシルバーの金メッキという徹底ぶりです。

 南米出身のおおらかさで格式ばることなく、明朗闊達で自由。すぐに「ロックンロール教皇」というあだ名がつき、音楽雑誌「ロックン・ロール」にも登場し、表紙を飾りました。

 しかし、型破りな行動に関係者はいつもハラハラ。

 2013年ブラジルのリオ・デジャネイロで行われ世界青年デーには、せっかく集まってくれる若者たちに悪いからと、周りの反対を押し切り、軽装備のオープンカーでパレードに臨みました。 

 セキュリティのスタッフは心臓発作寸前だったかも知れませんが、パレードは無事終了。

 フランシスコ教皇は「みなと直接話し、ハグできたのがとても嬉しかった。もちろん注意は怠ってはいけませんが、神を信じるように民衆を信じなければ」と後のインタヴューで語っています。

 そうは言っても治安の悪さで有名な大都市。危ういミッションでした。教皇の行動はある種、命がけのようにも見え、言葉に凄みさえ感じられます。キリストの教えを自らが体現されているようで、まさに人間愛と叡智が満ち溢れています。

 国民の80%がカトリックのイタリアも、現在は三人に一人が無神論者と言われ「教会離れ」が進んでいましたが、教皇の言葉に耳を傾け始めました。

 教皇は肺の一部が欠損した後期高齢者にも関わらず、時勢や流行に敏感でSNS発信や各国訪問も絶え間なく続け、現在は国境や民族を超え、宗教の垣根すら飛び越えて、世界中でフォロワーが増え続けています。

フランシスコ教皇、ローマ法王庁 

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2019.11.23(土)
文=大平美智子