ソウル・ミュージックの
男のダメさが好き
高橋 ちょうど僕たちが思春期とか青春時代にはパンクロックっぽいのが流行ってて、そういうのも好きだったんですけど、どうしてもパンクよりライトなJPOP的なライヴだと縦ノリでみんなが一緒の動きをすることが多くて、そこからだんだんソウルとかを知っていって海外の映像とかを見ると、みんな勝手に踊ってる感じがすごくうらやましくて憧れてましたね。
メンバーとも「そういうことがしたいよね」という話はずっとしてました。
光石 かっこいい。
──70年代アメリカのテレビ番組「SOUL TRAIN」の映像見ても、そういう感じありますよね。
光石 そうそう。僕が憧れてた東京のソウルのシーンも、ああいうとこだったから。ソウル・ミュージックってちょっといかがわしいし、その音楽の先にある何かを求めてるようなところがあるでしょ。
そこが好きなんですよ。ロックってストレートで、反体制みたいに拳を振り上げて、みたいなところがあるけど、ソウルはもっと下心がある(笑)。その感じもすごく好き。
高橋 ソウルの歌詞を読むと、情けないやつがすごく多くて、そこもすごく好きなんです。
光石 そうそうそうそう!
高橋 ロック・ヒーローのかっこよさとはまたちょっと違う良さがあるんです。ダメなやつや奥さんに逃げられるやつとか、そういうのが意外と好きで。
光石 モーメンツってスウィートソウルのグループから発展したレイ・グッドマン&ブラウンってユニットの「ステイ」って曲があるんですよ。
大雨の擬音から始まって、車が停まってるから「どうしたの?」って聞くと「車が壊れたの」って女性が言うわけですよ。「じゃあ、俺の車に乗んなよ」「助かったわ」ってやりとりで曲に入る。
「こんなことあるかよ!」って思いますよね(笑)。男の妄想だけでやってる感じで、聴いたとき「この歌最高!」って思いました。
高橋 そういう色気ゾーンは、まだ思い出野郎には全然取り入れられてないですね。光石さんに次のアルバムでその部分の語りをやってもらえばいいんですかね?
光石 ムード濃厚な語り。いいですね(笑)
2019.11.09(土)
構成・文=松永良平
撮影=佐藤 亘