ドイツのバレエ・カンパニーといえば巨匠ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団や、多くのスター・ダンサーが在籍するシュツットガルト・バレエ団が有名だが、現在「新勢力」として台頭しているバレエ団が初来日をする。デュッセルドルフとデュースブルクに本拠地を置くバレエ・アム・ライン(ライン・ドイツ・オペラ・バレエカンパニー)だ。

 ドイツの地方オペラハウスの付属カンパニーであったバレエ・アム・ラインを、一躍「ホットにした」振付家が、マーティン・シュレップァーという人物。耳慣れない名前かもしれないが、2020年からマニュエル・ルグリの後任としてウィーン国立バレエ団の芸術監督に決まっている。

 1994年にベルン・バレエの芸術監督となり、1999年から2009年まで自らが結成したバレエマインツで芸術監督を務め、2009年からバレエ・アム・ラインの芸術監督兼首席振付家に就任した。ブノワ賞ほか多数の賞に輝き、実力派として名を轟かせている。

 2019年9月の来日公演では、2018年に完成したばかりの『白鳥の湖』を上演するが、これが普通の『白鳥の湖』ではない。有名なプティパ=イワーノフ版以前に存在したオリジナル版リブレット(台本)を原本とし、一般的に知られることのなかった多くの登場人物を舞台に上げて、観衆にとって未知の『白鳥の湖』を披露する。

 ダンサーの動きも美術もユニークで、チャイコフスキーの音楽も「原典版」に準じて、耳慣れない構成で使われている。バレエに新しい概念をもたらそうとする「挑戦」ともとれる。

2019.09.07(土)
文=小田島久恵