世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第192回は、空飛ぶ極上レストランをたかせ藍沙さんがご紹介します。


記者発表まで極秘だった
シェフの名は

 JALから送られて来たプレスリリースを読んだときに目を疑った。ファーストクラスの記事を書くことが多い私にとっては、「ミシュラン2ツ星獲得のシェフによる機内食を提供」は珍しいことではない。

 でもそこには、「ハワイ線エコノミークラス」と書いてあったのだ。ファーストクラスやビジネスクラスではなく、エコノミークラス! いったい誰がどんな料理を作るのか、記者発表の日を指折り数えて楽しみに待った。

 新メニューは2018年9月1日(土)から、成田発ホノルル、コナ行きに提供されているので、既に機内で舌鼓を打った方もいらっしゃるだろう。発表された新メニューは、11月末まで、エコノミークラスとプレミアムエコノミークラスの1食めでいただくことができる。

 機内食を調理しているJALロイヤルケータリング内の会場に現れたのは、生江史伸(なまえ しのぶ)シェフ。西麻布にある2ツ星レストラン「レフェルヴェソンス」のグランシェフだ。

 フランスの「ミシェル・ブラス」やイギリスの「ザ・ファットダック」のスーシェフを務めた後、2010年に西麻布に「レフェルヴェソンス」をオープンさせた。店名は、「活気」「泡」「生み出す」を意味し、食事で元気になってほしいという願いが込められている。

 記者発表の冒頭、路線統括本部商品・サービス企画本部長の佐藤靖之氏から今回の機内食の意図が説明された。

 ハワイ路線は長い歴史がある重要路線。そこに、美味しいだけではなく、食べて元気になってほしいという思いに、生江シェフの選ぶ素材、料理が合致した。ハワイは癒やしの場所、ハワイに向かう機内から有意義に過ごしてほしいという。

 生江シェフからは料理の説明があった。美味しくて健康に配慮されていて、身体に負担がかからないもの、時間が経っても美味しく食べられるものをと心がけたという。

 自身のレストランでは作ることがないビーフストロガノフを選んだのはチャレンジで、多くの皆さんに好まれる味で、ナイトフライトでも身体に負担がかからないように配慮したとのこと。

 仕上がりを見届けることができないので、試作を繰り返し、実際に調理するJALロイヤルケータリングが作ったものを再び試食し、調整を重ねたという。そして、レストランのレシピとは違う、再現性の高い機内食となった。

 発表されたのは9~11月に提供されるメニューなので、秋の旬の食材を使い、見た目もひと工夫。秋の夕暮れをイメージして赤ワインを加え赤みを強調している。

 ちなみに、生江シェフ、個人的には機内食は食べないのだとか。理由は美味しくないから。そのネガティブなイメージを変えたいと意欲的だ。

 続いて、試食タイムとなった。

2018.09.22(土)
文・写真=たかせ藍沙