20代前半から始まった私の京都通い。以前は、短い旅の合間に、あれもこれもと欲張って予定を詰め込んでは、京都の街を北へ南へ、西へ東へ……。今思うと、よくもまあそれだけのパワーがあったものだ、なんて思っています。

 ここ数年で、私の京都での過ごし方もずいぶん変わってきました。通いなれた店に立ち寄るといつもの顔が待ってくれている。道具屋さんや、料理屋さん、喫茶店に骨董屋さん……。馴染みの場所や、自分にとってのとっておきの場所が、少しずつ少しずつ増えてきたのです。欲張りな旅もいいけれど、寄り道したり、時々立ち止まったりしながら見つけた、私が見つけた京都は、どこかはんなりと優しく、懐かしく、どこかきりっとした表情をしている。そんな京都らしい空気に触れているだけで、満足。そう思えるようになってきたのでした。

京都御所の脇をてくてく

 御所の西側に位置する、虎屋菓寮京都一条店へは、季節の折り目ごとに訪れます。にぎやかな四条通りのお店にも買い物がてら立ち寄ることがありますが、ここ一条にある菓寮は「心ゆくまでゆったりしたい」そんな気分の時に訪れる茶房です。秋が近づくと、そろそろ栗のお菓子が出始める頃かしら? と胸をときめかせ、お正月が近づくと、お年賀用の富士山の羊羹を注文しに。海外に住む友人知人のお土産には、小形羊羹をいくつか詰め合わせて……という具合に、一年を通してとらやさんのお菓子にお世話になっている私。もちろん東京の本店や、デパートに入っている店にもうかがいますよ。でもなぜだか一条店でのお買い物、そして茶房で過ごす時間は心が華やぐのです。「京都に来た」という旅の高揚感も多少はあるかもしれないけれど、でもやっぱりここでのひとときは、かけがえのない時間。そう思えてなりません。

虎屋菓寮のお庭から見たテラス席

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2012.08.31(金)