迷路のような旧市街もまた趣深い

路地裏のバーでたそがれる男性。

 旧市街はビーチの東寄りの内陸に入ったところ。迷路のような薄暗い小道の両脇に、レストランやカフェ、ブティック、書店などが並んでいます。

かつてシャガールがこの通りを歩いたかも⁉

 そのまま進んでいくと左手に、通り過ぎてしまいそうなほどささやかな、「ラスカリ宮」の入り口がありました。

17世紀の華やかな暮らしぶりに思いを馳せるラスカリ宮。

 このお屋敷は17世紀のジェノバ風の宮殿で、館内の天井には美しい絵が描かれ、当時のグランドピアノやハープ、バイオリンなどが500点以上も展示されています。陽気な音楽と、貴族たちの笑い声やドレスの絹ずれの音などが、遠くの世界から漏れ聞こえてくるよう。

入口は小さな教会のような風情だけれど、その奥には壮麗な祭壇が。

 近隣にある、入口は狭いものの、壮麗な装飾をちりばめたバロック調教会など、それぞれの扉の先に異世界が広がっているような錯覚を覚えます。

 ホテル・スイス脇からエレベーターで上れる見晴台からは、国際空港から続くビーチや、内陸ではびっしりとオレンジ瓦の家並みで埋められたニースの街を一望できます。丘の上の公園ではジャスミンの花の香が漂い、初夏の訪れを伝えていました。

平日は花や野菜のマーケットがサレヤ広場で開かれます。

 旧市街のサレヤ広場周辺では毎朝、花や野菜を並べたマーケットが開かれます。鉢植えもありますが、アレンジした花も人気。

 ある男性が大きな花束を2つ、作ってもらっていました。真っ赤なデージーやピンクのユリの花など、彩りが華やか。出来上がりを両手に抱えているのを見て、「どうして2つも?」と内心で思っているのが、顔に出ていたのでしょう。

 「ひとつはお母さんに、ひとつは奥さんに……」と、ニコリと笑う男性。

 その言葉を聞いたら、「さすがフランス!!」by オランジーナ。すべてが、かっこいいです。

ニース
●アクセス 中東やヨーロッパ諸都市で乗り継ぎコートダジュール空港へ。空港から車で約5分
●おすすめステイ先 ホテル・ネグレスコ
http://www.hotel-negresco-nice.com/ja/

【取材協力】
フランス観光開発機構

http://jp.france.fr/

古関千恵子 (こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2018.05.19(土)
文・撮影=古関千恵子