あのレジェンド編集者に憧れて……

山本コウタローとウィークエンドの代表曲は「岬めぐり」。今思えば、「岬めぐり」って、グラビアアイドルの芸名みたいだ。ヤンジャンあたりの表紙を飾っていても違和感はない。さて、こちらの写真もまた、レコード会社編集による廉価版企画物ベストのジャケットである。

 実は、ウィークエンドというアーティストが人気を得ていることを知った時点で、山本コータローとウィークエンドから山本コウタローが脱退したのかと早合点したのだが、そうではなかった。当たり前だ。平成も終わらんとしている今、何を言っているのか。

 NEWSというジャニーズのグループの名を聞けば「ヒューイ・ルイスは脱退したのか」とひねくれたことを言い、ザ・キラーズなるアメリカ出身バンドの名を聞けば「ピンキーこと今陽子は参加していないのか」と混ぜっ返す。

 40代半ばを超えてなお嬉々としてそんな振舞いばかりを繰り返しているわけだが、いつまでもこういうこと言って面白がってる場合ではないのかもしれない。何でも「TV Bros.」は隔週刊から月刊に変わるというし。時代の変化をひしひしと感じるが、でもやるんだよ!

山本コウタローが「午後は○○おもいッきりテレビ」の初代司会者を1年半にわたって務めていたことは、意外と知られていない。後任のみのもんたの印象が強いからだろう。この事実は、「オレたちひょうきん族」の“タケちゃんマン”において、初代ブラックデビルを高田純次が演じていたエピソードを思い起こさせる。すっかり忘れていたが、「おもいッきりテレビ」の初代アシスタントって泰葉だったのか!

 そして、ウィークエンドといえば、ジャン・リュック・ゴダールである。彼が1967年に発表した映画『ウイークエンド』(細かいことだが、この『ウイークエンド』の表記は、ザ・ウィークエンドや山本コウタローとウィークエンドと違ってイの字が大きい)の終盤におけるヒロインの変貌はあまりに衝撃的だ。

亡くなった川勝正幸氏と雑談した折、彼は、北野武の『みんな~やってるか!』に『ウイークエンド』が与えた影響は大きいのではないかという仮説を語っていた。なるほどと思った。また、昨年の韓国映画『新感染』を観た知人の某ライターは、同作に最も近い映画は『ウイークエンド』だよなとつぶやいた。むべなるかな。

 まあ、ネタバレになるから詳しくは言わないが、ミレーユ・ダルクよろしく、自らの血を顔にペイントするメイク、というのは革新的かもしれない。おすすめはしないが。

 この『ウイークエンド』が好きだったことから、「ウイークエンド・スーパー」という名の成人向け雑誌を創刊した伝説的編集者が末井昭氏である。ずばり「ウイークエンド」なる誌名にならなかったのは、すでに同名の商標が登録されていたかららしい。

末井昭の名著『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫)。この印象的なタイトルは、著者の母が隣家の若い男と不倫関係に陥った挙句にダイナマイトで心中を行ったという実話に基づく。

 末井氏といえば、白夜書房において「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」など、時代を画す雑誌を世に送り出してきたカリスマ編集者である。

 その自伝的エッセイ『素敵なダイナマイトスキャンダル』文庫版の表紙では化粧して女装しているし、確かこの格好で「パチンコ必勝ガイド」のテレビCMに出演していた記憶もあるので、メイクにも一家言あるだろう(とだいぶ適当なことを言ってみる)。

件の同名書籍を映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』は現在絶賛公開中。ロードショーが終わったら、どこかの名画座でルキノ・ヴィスコンティないしロベール・ブレッソンの『白夜』、あるいはライオネル・リッチーの「セイ・ユー、セイ・ミー」を主題歌に起用したことで知られる『ホワイトナイツ/白夜』と2本立て上映すると気が利いていると思う。目黒シネマあたりが手を挙げてくれないだろうか。

 まったくもって末井氏の偉業には及びもつかないが、俺もまあ一応編集長の肩書を拝命している立場なので、いささかなりとも「ウイークエンド・スーパー編集長」の座に近づこうと、策を弄してみる。

 ふと、オオゼキなりいなげやなりで週末に働けば「ウイークエンド・スーパー編集長」と呼ばれる資格は有しうるんじゃないかと思い立ち、自宅近くのスーパーでアルバイトとして勤務し始めたのだが、その初日に偶然、上役に当たる弊社某役員がよりによって自分のレジに並んでいたのは驚いた。

 どうにもこうにも気まずくなり、2日目にはスーパーに辞表を出した。職場のみなさんには迷惑をかけたと心から反省している。副業はダメ。ゼッタイ。なお、私が接客した某役員は、エリンギとシーチキン2缶とシャウエッセンとふろ水ワンダーを購入していました。

2018.04.02(月)
文・撮影=ヤング
写真=文藝春秋