山本麻未(やまもと まみ)さん
家族:夫、長男(5歳)、実母
会社名:mimiface JAPAN 合同会社
肩書:代表・ヘアメイクアップアーティスト
働き方:フリーランス
ヘアメイクアップで
「笑顔」をもっと増やしたい
高校生のときに、マレーシアへ交換留学に行き、そこで現地の子にメイクをしてあげたところ、とても喜んでくれたことが今の仕事を始めるきっかけになったという山本さん。
「『かわいくなってうれしい』とか『きれいになりたい』って、万国共通なんですよね。言葉が通じなくても、すごく喜んでくれたのがわかってうれしかったです」
21歳でフリーランスのヘアメイクアップアーティストになった山本さんは、23歳で中国にわたる。結婚し、ますます活動の幅を広げていこうと考えていた矢先に妊娠発覚。中国での仕事継続をいったんあきらめ、日本で合同会社を設立した。
ヘアメイクアップは、依頼がはいれば土日休日も現場へ行き、朝早いことも夜遅いこともある。時間も読めない。
そのため山本さんの母と同居し、家族で協力体制をとりながら、依頼を受けるのは1日1件のみと決めて仕事を続けている。ヘアメイクアップのほかに、ビジュアルプロデュース、コンテンツ制作などの仕事も入るため、忙しい毎日だ。
しかし、山本さんの活動はそこにとどまらない。チャリティ企画や運営なども手掛けているという。
山本さんは、なぜチャリティ活動をしているのだろうか。
子どもの病気をきっかけに
チャリティ活動を開始
山本さんの長男・海徳くんは3歳のときに1型糖尿病を発症した。1型糖尿病を発症すると、自分の体の中でインスリンを作ることができなくなるため、一日に何度も血糖値を測ったり、インスリンの自己注射をしたりする必要がある。
ある日突然、1型糖尿病という病気とも向き合わざるを得なくなった山本さんは、これから1型糖尿病のことを世の中にもっと知ってもらう必要があると感じるようになった。
ひとつには「親が甘やかして育てているんじゃないの?」と思われがちな認識を正したいという気持ちがある。(1型糖尿病は、自己免疫性の疾患であり、遺伝でもなければ、生活習慣病でもないし、感染することもない)。
もうひとつ、日常生活を滞りなく過ごすためには、周りの人の1型糖尿病に対する適切な理解が必要ということがある。
具体的に言えば、低血糖になってしまったときには、糖分の高いものを摂る必要がある。そのときに周囲の理解がなく適切な処置ができなければ、インスリンが不足し、意識喪失などを引き起こすことにもなりかねない。
そこで山本さんは、1型糖尿病の認知啓発のために、チャリティ撮影会を開催したり、あるいは企業に働きかけ、社員向けヘアメイクやマッサージを行ったり、関連商品を企画して売り上げの全額もしくは一部を寄付するといった活動を行っている。
チャリティが押し付けにならないよう、「気軽に楽しいことに参加しつつ、楽しさのおすそ分けをチャリティにする。そして1型糖尿病など社会問題をまずは知ってもらう」というスタンスだ。
当初、「働きながら、子育てをしつつ、チャリティ企画までやっている人」と聞き、「まねのできないようなパワフルな人」というイメージがあったが、本人はそれほどの気負いはなく、「1型糖尿病のこと、もっと知ってもらえたらいいなあ」という思いでやっているのだった。
いくつかのポイントを押さえれば、1型糖尿病患者の子どもの日常生活は、特に健常児と変わらない。山本さんは、「本人も毎日の習慣として、やらねばならないことは認識しているので特に大変ということはありませんよ。歯磨きをするような感覚で、自分で血糖値を測ったり、『注射して!』と自分で持ってきたりします」とニコリ。
育児の上でのポイントは、なるべく自分でできることは早い段階でやらせることと、特別扱いをしないこと。「目が悪ければ眼鏡をかけるし、耳が悪ければ補聴器をつけますよね。それと同じで、『膵臓がインスリンを作れなくなった』という個性なのだと思っています」と語る。
次ページでは山本さんのプライベートから、子育てと暮らしが楽になるアイデアを2つ教わった。
2018.04.19(木)
文・撮影=HITOMINA