極上ヨル専用パンとの攻防
これは胃袋との戦いだ!

 いい匂いを漂わせながらパンが運ばれてきた。価格は「365日」に合わせて365円というからニクイ。いや、ニクイのは値段だけではない。熊本県菊池にある「ろのわ」という有機栽培農場の小麦粉を使ったヨル15℃だけのスペシャル。しかも、お代わりOKというではないか!

食事の邪魔をしないふわっとした口溶け。いや、これだけでも食べたいほどのおいしさ。これは参った!

 さあ、肉料理もいってみよう。子羊背肉の香草マスタード風味(2,500円)は、分厚くカットされたラムラックが3本!

マスタードと香草、そして下に敷かれたトマトソースがいい仕事をしている。

 大山鶏と木の実のバッファロー風(1,600円)は、皮目をパリッと焼き上げたジューシーな鶏に、ニンニク風味のソースが絶妙。ほかにも豪州産牛のパベットステーキ(2,300円)、ライ麦畑の香り豚カツレツ(1,600円)など、魅力的なものがたくさん。次回はどれにしようか。

素材そのもののおいしさを大切にしたシンプルな調理。添えられた野菜もうまい。

 〆の炭水化物もぬかりがない。まずパスタから選んだのは、プッタネスカトマトソース(1,400円)。麺はスパゲッティーニを使用。上からペコリーノチーズをたっぷり。なによりソースがうまいからパンが進むではないか! いかん、料理が食べられなくなってしまう!

パンとのせめぎ合いは、今後も課題になること間違いなし。

 同じパスタメニューに15℃の冠がついているものを発見してしまった。ヨル15℃ミートソース(1,600円)。ミートソースと聞くと頼まずにいられない私。こちらはフィットチーネ。羊の自家製ソーセージや豆を煮込んだ特製ミートソースをからめてある。

フィットチーネはなんと自家製! ソーセージのピリ辛具合もいい。

 魚介のスープリゾット“olla”(1,800円)は、1,800円追加でオマール海老がゴロゴロとなる。もちろんやってもらおう。予想外な“汁だく”ぶり。「これも僕のリクエストです」と杉窪氏。おおいに共感する。

魚介のうまみがふんだんのスープ。自然農法の米の固さも完璧。

 もちろんデザートも充実。5種あるなかで選んだのは、モンブラン(950円)とクロワッサンのミルフィーユ(900円)。

生クリームのおいしさはお墨付き。ほかにブラウニーやカタラーナも用意。

 最後をエスプレッソで〆ようとしたら、「アメリカーノにしてください、ぜひ」と強く勧められた。そのアメリカーノとともにサービスされたのが、おかめの形のらくがん。半分噛んでみると、なかにはコーヒー味のクッキーが。最後にもこんな予想外なものが控えていたとは!

 そして納得した。たしかにエスプレッソでは足りない。アメリカーノのカップを両手で包みこみ、ほっこりする瞬間が至福だった。

コーヒーのおいしさも見逃せない。なんたって店内に焙煎機まであるのだから。

 杉窪氏が食べたいものを見事に具現化させたヨル15℃だが、なにしろプライスがすばらしすぎる。「これ、赤字じゃないの?」

 「昼までの営業で充分黒字なので、ヨル15℃ではしっかり原価をかけた料理を提供しようと。そこでお客様があふれ、ゆくゆくはオーナーの僕ですら入れなくなるような店になってくれたらうれしいのですよ」と語る杉窪氏。

 その日が訪れるのはそう遠くないだろう。なぜなら、この日連れ立った友人はみな次の予約を入れていた。

 そして、私はすでに今月2回目の訪問を果たしている。

ヨル15℃
(ヨルジュウゴド)

所在地 東京都渋谷区富ヶ谷1-2-8
電話番号 03-6407-0942
営業時間 18:00~23:00(22:00フードL.O. 22:30ドリンクL.O.)
定休日 無休
予算 夜 8,000円~
https://www.facebook.com/yoru15c/
[2017年12月訪問]

Keiko Spice(けいこ すぱいす)
東京都生まれ。得意なディスティネーションはハワイと香港。普段は3日に1回のペースで焼肉を中心とした食生活。別名「肉の妖精」。

Column

新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り

ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!

2017.12.26(火)
文・撮影=Keiko Spice