祭りというよりブロックパーティ
ベルギービールやお焼きの屋台。
『熊本地震復興ライブ in 西原村』はお昼過ぎからゆるゆるとスタート。倉庫ライブハウスを囲むようにいくつもの屋台が出ていて、それが移動古書店にジャマイカ風ジャークチキン、ベルギービール、手作りジャム、インドカレー、有機茶葉……西原のひとたちのライフスタイルをそのままあらわしているような、賑やかな雰囲気だった。倉庫ライブハウスでは入れ替わりにいろんなバンドがプレイして、終わったミュージシャンたちはそのまま外でビールを飲んだり、子どもと遊んだり。
左:阿蘇のポークソーセージも。右:あっという間にほうきが出来上がる。
アルコドのおふたり。愛知県から参加。
震災前は西原村で営業していた「スプートニク」もおいしいジャムを販売。
祭りとこれを呼ぶには香具師の屋台もないし、PTAや教育委員会の匂いもない。オルタナティブだけど、それが無理してるんじゃなくて、みんなにとってはいつもの感じ。そういうリラックスした空気感のなかで、僕らもだらだら飲んだり食べたり音楽に浸ったりしているうちに気がついた。これは祭りというより、ブロックパーティなんだ。
金曜と土曜のみ駅舎内で営業している「ひなた文庫」。
お客様としていらしていた正木さんご夫妻。
行政の力を借りた大仰なイベントでもなく、伝統の祭事でもなく、「たまにはみんなで集まって遊ぼうよ」というくらいの週末。そういう普通のブロックパーティを、東京で開くことはとても難しいけれど、西原村ではそれが自然に成立していて、その中心に「くぼたくんち」という自動車工場がある。
子どもたちに一番人気だった射的コーナー。
山のふもとの敷地内に子どもたちの声が響き渡る。
ローカルであること。でも閉じるのではなく、開いていること。そして背伸びせず自然体であること。南阿蘇以外の、おそらく熊本市の若者ですらほとんど知らなかったであろう「くぼたくんち」のライブに参加できて、僕はなんだか、思いがけずうれしいプレゼントをもらった気がした。
●CREA<するめ基金>熊本とは?
「平成28年(2016年)熊本地震」において、被災地への支援を目的としたCREA<するめ基金>熊本。“するめを嚙むみたいに、じっくりたゆまず”支援を進めていきましょう、という村上春樹さんの言葉を基に、活動を行っています。
都築響一(つづききょういち)
1956年、東京都生まれ。93年『TOKYO STYLE』を発表。96年『ROADSIDE JAPAN』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。有料メルマガ『ROADSIDERS' weekly』を毎週発行。
CREA〈するめ基金〉熊本
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- 文・撮影=都築響一
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CREA 2018年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

