司会に対する勝手な要望

左から、佐良直美と山川静夫。1974年から77年まで、連続4回にわたってコンビを組んだ紅白史に残る名司会である。写真は、「オール讀物」2017年1月号誌上で紅白裏話対談を行った際のもの。

 最近では司会は「紅=活躍した女優」「白=ジャニーズ」という組み合わせが定番だ。いや、それはいいのだが、回しが達者なジャニーズに、司会女優が紅組の進行やフォローまで頼るというアラアラ可愛いけど困ったわね的なことも時折ある。

 いやいや、紅白歌合戦はその名の通り「合戦」ではないか。隊長が敵に頼ってどうする!

 もっと「ハッハッハ負ける気がしないんですけど」とお互いをディスりあうくらいの負けん気が欲しい。毎年挟まれるディズニータイムを少しばかり縮小し、紅白ラップバトルをするなど、激しいマイクパフォーマンスがあってもいい! そういう意味で、司会の人選は口が達者な方を求む。

白組を挑発し、紅白を盛り上げた1970年代の佐良直美の司会はもはやレジェンド。純粋に歌手としても、1967年から79年まで13回連続出場を果たしている。「いいじゃないの幸せならば」は、69年の出場時に披露した名曲。

 わかってはいる。女優さんに「司会のうまさ」など求めちゃいかんのだと! もちろん、個性が出て非常に見応えがある方もいるのだ。

左:綾瀬はるか。噛みまくる彼女を、もはや娘のように優しく見守る出演アーティストも多し。
右:数秒の歌手紹介ですらネットリ感情を入れる仲間由紀恵の司会は紅白を一つの芝居に変える。

 全てに「情」を入れ込む包容力の女神・仲間由紀恵。

 ボケを芸のレベルまで持っていった綾瀬はるか。

 そして、台本を読んでます! というアンドロイド司会ぶりが伝説となった堀北真希。彼女の「やれと言われたことだけやる」姿勢は逆に清々しかった。あれだけ淡々とした司会は後にも先にも出てこないだろう。

左:堀北真希。彼女の芸能界復帰は絶対ない。これっぽっちも未練がないと思う。
右:2016年に司会を務めた有村架純。私は白組・相葉君のポンコツカワイイ司会にハートを奪われていたので、彼女はほぼ記憶にない。

 一部では「オワコン」などと言われながらも40%前後の視聴率を誇る、国民的歌の祭典、紅白歌合戦。なんだかんだいいつつ、出演歌手も演出も見どころ&ツッコミどころのカタマリである。昨年「バラエティ番組みたいになってついていけない」と思っていた私も結局、この時期になると自然に高まるテンション……。

 今年も観るのだろう。そして、家族でああだこうだと突っ込みつつ、一緒に歌うのだろう。

 続報を待とう。紅白出場歌手発表は毎年、11月25日前後。楽しみだ!

「NHK紅白歌合戦」公式サイト
http://www.nhk.or.jp/kouhaku/

田中 稲(たなか いね)
大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。現在は「関西ウォーカー」で“Kansai Walkerで振り返る! 00年代の関西”連載中。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2017.11.11(土)
文=田中 稲
写真=文藝春秋