トップサーファーが賞賛する波の魅力

こちらは2010年タヒチ島のチョープーで開催された、サーフィンの国際大会。(C)GIE TAHITI TOURISM - Steeve Dickinson

 そして、フアヒネ島はサーフィンがさかん。諸説ありますが、サーフィンは古代ポリネシア人がタヒチからハワイへと持ち込んだのがはじまりとされ、そんなサーフィン発祥の地において、フアヒネ島は特別なオーラを放っているようです。

 はじめてフアヒネ島へ訪れたのは20年前。その頃のタヒチのサーフィン界のツートップに会う幸運に恵まれました。

 ビッグウェイブのポイント“フィティ”について、92年ロングボード世界選手権のチャンピオンのテヴァ・ノーブルは「波、風、水の感覚、どれもたまらない。フアヒネの波はベスト。サーフィンは人生だね」。

 もう一人のスミス・ルメールは「フィティで最初にサーフィンをした時、これが自分の道だと悟った。波の上から見るフアヒネ島は格別に美しいんだ」。

ここはフィティではないけれど、海から望む島の姿を見たいという野望がのちにとんでもないことに……。(C)GIE TAHITI TOURISM - Lucien Pesquie

 その時、ふと、「フィティの波の上からフアヒネ島を見てみたい」と思ってしまったのが、運の尽き。

 スミスと一緒にボートで沖へ出たものの、あまりの波の大きさに及び腰に……。ビビる私に、船長は一言「波は乗るか、乗られるか、だ」。ならば、乗るしかない。ボディボードを抱えて、ドボン!

島の周囲はモツ(小島)を乗せたリーフが張り出し、サーフスポットが点在しています。(C)GIE TAHITI TOURISM - Lucien Pesquie

 はい、思い切り、大波に乗られました。

 海の中でぐるんぐるんとかき回され、まるで洗濯機の中のTシャツのよう。パワーが弱まることのない、連続した波の攻撃を受け、水中からなかなか脱出できません。

 岩礁などから顔を守り、リーシュ(ボードをつなぐコード)が岩にひっかからないようにと祈りながら、ずいぶん長い時間、波に揉まれている気がしました。ようやく水面に顔を出した時、あれ、首に異変が。

 ライアテア島へレントゲンを撮りに行き、タヒチ島の病院で診断の結果、頸椎捻挫だと判明。ドクターは「ここで手術するか、すぐに帰国しなさい」。もちろん、帰国を選びました。

リーフ内のラグーンはおだやか。光を宿したブルーが輝いています。(C)GIE TAHITI TOURISM - Philippe Bacchet

 フィティの波が見える、ホテルのベッドで寝込んでいると、バナナを手にしたスミスが心配そうにお見舞いにやってきてくれました。

 「フアヒネ島のサーファーは、君の勇気を忘れないよ」と、スミス。

 いえ、身の程知らずのおバカのことは、どうか早く忘れてください。首の痛みと恥ずかしさに悲鳴を上げたい気分で、ひたすら願った私でした。

 フアヒネ島の波は、上級サーファーのみに許された聖地です。

フアヒネ島
●アクセス タヒチ島のパペーテから国内線で約40分
●おすすめステイ先 ロイヤル・フアヒネ
http://www.royalpolynesiahotel.com/huahine/royal-huahine-hotel/

古関千恵子 (こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

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2017.11.04(土)
文=古関千恵子