街中にある古代遺跡で
ギリシャ神話の神々に出会う

「パフォス考古学公園」内にあるメイン施設「ディオニソスの館」。大きな館跡で、モザイクのある部分だけに屋根を付けて保護している。

 「パフォス考古学公園」はパフォス城から歩いて10分足らずの場所にある。「公園」という名の通り、単なる博物館ではなく広大な敷地に点在する遺跡群を徒歩で鑑賞するというスタイル。

 見どころは2~4世紀頃の邸宅跡のモザイク。建物自体は地震などで倒壊してなくなってしまったが、床の部分に残された見事なモザイク画を見ることができる。

 エントランスを入って最初にある建物は、モザイクを保護しながら鑑賞できるようにボードウォークを造り付けた「ディオニソスの館」。まずはここから見学を始めたい。

「ディオニソスの館」にあるモザイクのひとつ。中央に見える人物はナルシス。水面に映る自分の姿を眺めている。あの、「ナルシスト」の語源となった神だ。
ギリシャ神話のオリンポス12神に数えられる、豊穣と酒の神ディオニソス(左)と、ワインをもらって飲むアクメ。

 館の名前となったディオニソス(バッカス)、アポロン、ナルシスなど、ギリシャ神話の主役たちが生き生きと描かれている。ギリシャ語と英語で解説が書かれているので、ストーリーを読みながら巡ると楽しい。

「パフォス考古学公園」は、広大な敷地全体が遺跡だ。ミノタウロスを退治するテセウスのモザイクは屋外にあり、上から見事な装飾全体を望めるように小さな展望台が備え付けられている。
「アイオンの館」の中にあるモザイク。生まれたばかりのディオニソスを抱くヘルメス、竪琴の神アポロンとの音楽合戦に敗れて取り押さえられる山野の精霊マルシアスといったストーリーが描かれている。
小さなタイルを使い、絵画のような色使いで微妙な顔の表情まで表現されている。

 いくつかのモザイクは屋根もなく野ざらしになっている。それでも2000年近くの歳月を経てなお色鮮やかに残されているモザイクの保存性には驚かされた。敷地が広いので、時間に余裕をもってゆっくりと鑑賞したい。天気のいい日には飲料水も忘れずに。

左:聖パウロが縛られてムチ打たれたという白い柱。後方の建物が聖キリヤキ教会。
右:聖キリヤキ教会の内部。祭壇に新しい花が飾られたところだった。

 見事なモザイクの数々を鑑賞した次に向かったのは「聖パウロの柱」。キリストの使徒パウロがローマ提督の命により39回ムチ打たれた際に縛られたとされる柱だ。その後、パウロはローマ提督をキリスト教に改宗させたという。

 もともと7本あった柱は396年の大地震で崩れてしまったが、この1本だけが残っている。遺跡の上には1500年頃に聖キリヤキ教会が建てられた。

Paphos Archaeological Park
(パフォス考古学公園)

所在地 Kato Pafos, near Pafos Harbour
電話番号 26-306217
http://www.visitpafos.org.cy/archaeological_park.aspx

2017.08.30(水)
文・撮影=たかせ藍沙