貴重なアルガンオイル
その調達についてのストーリー

左:リヤド・ヴィラ・ブランシュにはアウトドアプールも。
右:搾りたてのオレンジジュースやモロッコ風パンケーキ、自家製ヨーグルトなどが並ぶ朝食の風景。美青年ギャルソンの笑顔が眩しい!

 2日目は朝から予定が満載だった。モロッコ風パンケーキやセモリナ粉のパンなどが並ぶ美味しい朝食を食べた後、午前9時にロビーに集合し、歩いて約5分のところにある現代的ホテル「SOFITEL THALASSA(ソフィテル・タラサ)」に移動。前日に「快適な服装と歩きやすい靴で」との指示があったので、みなさんリゾート風のラフなドレスや、カジュアルシックなパンツ姿が目立つ。その中でもまるで60年代ハリウッド映画の中から飛び出してきたようなファッションの人もいて、参加者を眺めているだけでもかなり楽しい。

 ホテル内にあるモロッコ風インテリアのバーが、新製品発表会の会場となっており、スライドを見ながらのプレゼンテーションが始まった。まずケラスターゼ本社の方々による、ブランド初となるオーガニックケアの誕生秘話が語られていく。

 環境保護が叫ばれて久しい中、安全かつラグジュアリー感をヘアケアに求める女性たちが増えていること。それを踏まえて、自然派女性に向けたオーガニックヘアケア「オーラボタニカ」が誕生したという。貴重なアルガンオイルの原料を調達する際には、フェアトレードを行い、加えて生産者の方々への安定した収入と地域文化の発展支援を約束する旨を説明していく。

 確かに大企業がモロッコの大西洋岸でしか採れないアルガンオイルを商品に使うとなると、地域貢献はある意味、「お約束事」だろう。実際、ケラスターゼはアルガンオイルに関わるモロッコ現地女性の雇用を多数生み出し、未来に向けてアルガンの植樹も始めていることを、具体的な数字を挙げながら説明していた。

生産者の地位向上と
自立をめざして

 続いてはモロッコでアルガンオイルといえば、この女性科学者の存在は外せない、ラバトにあるモロッコ国立モハメド五世大学理学部教授、ズビダ・シャァルーフ博士が登場。

 アルガンオイルの科学的効能を始め、アルガンオイルに関わる現地女性の地位向上をめざすアプローチについて、たとえば1996年には1リットル3ユーロだった価格が、世界中にマーケットが広がることで、2016年には25ユーロで取引されるようになり、かつては収入を得る手段を持たなかった女性たちの自立につながっていることなどを話してくれた。

左:発表会は「ソフィテル・タラサ」内のスタイリッシュなバーで行われた。
右:パリのケラスターゼ本社のプロジェクト責任者が商品開発のコンセプトや現地との相互協力についてスピーチ。

 しかし最も印象的だったのは、それに続く2人の現地コーペラティブ(協同組合)代表女性たちのスピーチだ。彼女たちは伝統的なジュラバに身を包み、ヒジャブで頭髪を覆っていたが、その衣装がとてもカラフルで美しかった。

 アガディールから数十キロ離れた土地で協同組合を営むファティマさんは、2004年に29名で始めた女性組合員たちが、現在は100名を超えるまでに発展したと語る。今後はさらなる品質改良を行い、独自の化粧品を作ってみたいこと、女性たちの意識向上のために支援を続けたいこと、よりピュアなオイルを搾るために最新の圧搾機を買いたいことなど、夢や抱負を熱く語ってくれた。

左:ワークショップ用にディスプレイされたアルガンの実と、それを割る際に使う石の道具。
右:協同組合の女性たちが熟練の技でアルガンの実を石を使って割り、中にある仁を取り出していく。

 それが終わると海岸に面した中庭で、ワークショップが始まった。アルガンの固い実の中から仁を取り出す作業を、協同組合の女性たちが行う。彼女たちは石を使って実を割り、器用に仁を取り出していく。

 それをみんなで実際にやってみるのだが、指を石で潰しそうになったりしてなかなか難しい。約10回、固く乾燥した実を叩き続けて、やっと中の仁を取り出せたときは、喜びもひとしおだった(笑)。それを彼女たちは、平均して2回で実を割り、仁をリズミカルにカゴに投じて行くのだから、熟練の技が必要と見た。

 おしゃべりしながら、ときにはみんなで歌を歌いながら作業をするのだ。「働くこと」が「自由」や「自立」につながると知った現地女性たちの、楽しげな姿が眩しかった。

ソフィテル・タラサのプライベートビーチは、アガディールの中でもとびきり美しい!

2017.06.09(金)
文=岡本翔子
撮影=齋藤順子