◆東山エリア・八坂
ニコライ・ポリスキー
「バンブーウェーブ」

 八坂地区は、市街地から車で15分ほどの里山にある。取材時には棚田に水が張られ、耳を澄ませば雨を待ちわびるカエルの鳴き声が聞こえてきた。

山の下からやわらかな風が頬をくすぐる。

 この風景の中に作品を生み出すのは、ロシア人作家ニコライ・ポリスキーだ。世界各地で活躍する彼は、木や干し草など地元の素材を使った大規模な作品で人々を魅了してきた。はじめて信濃大町を訪れたニコライが八坂地区で注目したのが、美しい竹林。地元の人たちの協力のもと、この竹を使った構造体が完成する。

 八坂地区に暮らす人たちにとっては、竹は生活の一部だ。どうすれば竹林から効率よく竹を切り出せるのか、どうやれば上手に竹を曲げられるのか……竹の扱いに関しては、ニコライよりも地元の人たちのほうが詳しい。地元住民との協働で完成する作品のタイトルは「バンブーウェーブ」。こののどかな里山に、どんな波が起こるのか楽しみだ。

左:素材は竹。250本もの竹を地元の人たちが切り出した。
右:こちらの支柱で竹を支える。

◆東山エリア・八坂
フェリーチェ・ヴァリーニ
「集落のための楕円」

 八坂地区は、その名前の通り坂の多い地域だ。この坂を下ったところで振り返ると、驚きの風景と向き合うことになる。

5月半ばには桜が咲いていた。

 スイス生まれの作家フェリーチェ・ヴァリーニが、作品の舞台となる空間をもとめて視察した際に、迷わずきっぱり「ここだ」と決めたのが、全2世帯のこの集落。ヴァリーニは、立体的な空間をひとつの平面のように見せる作品で知られる。

 家屋が集まる立体的な空間が……。

振り向いた瞬間、同行の人たちも皆、感嘆の声をあげた。

 この地点から見ると、黄色い線がつながって見えるが、少し坂を上ったり下ったりすると線が途切れる。とても不思議な視覚体験だ。

 次は、東山エリアを離れて、市街地エリアを紹介しよう。

2017.05.27(土)
文・撮影=CREA WEB編集室