コーヒーの味わいは
「空間」によってさらに美味しく!

おしゃれで個性的なインテリア・グッズに囲まれた店内で、音楽を聴きながら、コーヒーを愉しむハイセンスなひととき。
「PRETTY THINGS」でマスター(オーナー)を務める、山本宇一さん。

 1990年代後半から2000年にかけ、駒沢の「BOWERY KITCHEN」や表参道の「LOTUS」といった、東京のカフェブームの火付け役ともいうべき名店を生み出し、近年では、ニューヨークの食のセレクトショップ「DEAN&DELUCA」の日本出店を総合プロデュースするなど、時代を彩る人気店を続々と世に送り出している、空間プロデューサーの山本宇一さん。

 常に、トレンドの一歩先を捉え続けるカリスマ的ヒットメーカーである彼が、2013年、駒沢の街角に一風変わったコーヒーショップをオープンした。

人の温もりを感じる
アットホームなお店

 世田谷の駒沢オリンピック公園から5分ほど歩いた街角に、山本さんがオーナーを務めるコーヒーショップ「PRETTY THINGS」はひっそりと佇んでいる。看板などは一切なく、外観だけでは何のお店かわからない、少し謎めいたレトロな建物の扉を開けると、そこにはコーヒーの芳醇な香りとともに、心躍る空間が広がっている。

「以前から、この場所の雰囲気がいいなと思って目をつけていたんです」と山本さん。

「店名である『PRETTY THINGS』には、自分にとって愛しいものたちという意味が込められています。僕にとってそれに値するものをお店に集めたところ、コーヒーショップというよりも、何でも屋さんみたいな雰囲気になっていますね(笑)」

BGMにヴィンテージ音楽が流れる店内には、あちらこちらにレコードや本、雑貨など、ハイセンスなグッズがずらり。

 長年、国内外で数多の人気店をプロデュースしてきた山本さんが、あえて今、「街角の小さなコーヒーショップ」にこだわったのには、深い理由がある。

「今、街中には大小さまざまなスタイルの飲食店がありますが、やはり、店員さんもお客さんも、個人の顔が見えるお店が一番だと感じるんです。ですから、このお店を作るときにも、人の温もりが伝わるような、手触りの感覚をひとつのコンセプトにしました。例えば、僕が手書きでデザインしたロゴや、気立ての良いショップガールが丁寧に淹れてくれるコーヒーなど、そうした親しみを感じるサービスこそが、長く愛され続けるお店には欠かせない要素ではないでしょうか。そういう意味で、PRETTY THINGSは、僕にお店作りの原点を思い出させてくれる存在なんです」

左:山本さんお手製のロゴが描かれたオリジナルマグカップは、店内で購入することもできる人気のアイテム。
右:愛らしい笑顔の店員さんが、一杯ずつ丁寧に淹れてくれるコーヒーは格別の味わい。

2017.04.26(水)
文=中山理佐
撮影=佐藤 亘