今宵はビーフをとことん味わい
とことん学びます

 エントランスから3歩進んだところで最初の「わお」が出る。そこには東京スカイツリーを望む極上の夜景。“摩天楼のパノラマ”なんて今どきは使わないが、ここではフレーズそのままの景色が広がっているのだ。

 さらに店の奥に進むと2度目の「わお」が。視線の先には東京タワー。

東京の、いや、日本の2大タワーを一度に望むステーキハウスだなんて!

 ウルフギャングやBLTステーキ同様、この「ALEXANDER'S STEAKHOUSE」も米国からやってきた“黒船”ステーキレストラン。西海岸のITタウンであるクパチーノ発で、グルメの花咲くサンフランシスコではミシュランの星も獲得した実力派だ。

 ステーキハウスというと、前菜からはじまり、あとはドーン! とステーキ、そして付け合わせというのがお約束だが、ここでは新感覚のクリエーションで肉を堪能させてくれるという。それが「Study of the beef(スタディ・オブ・ザ・ビーフ)」。肉尽くしの12,000円のコースだ。

 アミューズは、アキレス腱をカリッカリに焼き揚げたクリスピーテンドン、ビーフオニオンディップ添え。親指と人差し指でつまんでパクッとひとくち。食欲が増してくるのを感じる。学習意欲は早速スイッチオン。

じゅわーっと広がる脂がうまい。

 ワインをいただこう。ここは、アメリカの有名ワイン誌「ワインスペクテイター(Wine Spectator)」のベスト・オブ・アワード オブ・エクセレンスを2008年から8年連続受賞するほど素晴らしいのだ。

 聞けば、カリフォルニアを中心にヨーロッパのものも合わせると800種をラインナップ。さてどうしたものかと悩んでいると「実はハウスワインも自信があります」とスタッフ。

 本国のマスターソムリエがハウスワインを選ぶのだが、毎年さまざまなワイナリーからピックアップしているという。しかも、通常は自社の銘柄を隠すのを嫌がるようなビッグなメーカーのものを。

「ここのハウスワインはいつも同じだと思われないように、お客さまにいつも驚きを届けたいのです」

 グラスワインは900円~、ボトルは5,000円~。ちなみにスタディコースだと6,000円でワインペアリングが可。お得ではないか。

ハウスワインは赤のみ。すばらしい芳香。

 美しい銀の器が運ばれてきた。和牛テイストと名付けられた一品が登場。茸とクリームが中にしのばせてある。一体感に夢中になる。

和食のようにも見える。盛り付けの繊細さもセンスがいい。

 牛タンは一度煮てやわらかくしてからソテー。鱒の卵を添え、杉の燻製オイルがかけてある。下にはマーブルポテト。香りを吸い込み、もう一度皿に目をやる。

美しいものはおいしい。おいしいものは美しいのだ。

 それにしてもここはパンまでうまい。エゼクティブシェフであるジェームス氏は、母がパン職人だったこともありパンにとてもうるさいのだ。

 ベーカリーに大きさや焼き加減を指示し作ってもらっている特注品のパンにミルキーな発酵バターをオン。もう、たまらない。「お代わりもどうぞ」そんな誘惑をなんとか立ちきった頃、お待ちかねの品がやってきた。

店でホイップしているバター。ほんのりと甘みがある。

2017.03.27(月)
文・撮影=Keiko Spice