単純作業と頭を使うことを分け
適した時間に作業をする

 小学校1年生のときにすでに社会の窮屈さを知り、不登校になった佐藤さんだが、子育て・家事・仕事をこなす生活はそれほど窮屈ではないようだ。

 「両立するにあたり、大変なことはなんですか?」と聞いても「うーん?」と首をかしげる。

 スケジュールを聞くと、フルタイムと変わらず、かなりハードなはずだが。

 「比較的器用なので、家事もなんでもできるんですけれど、あえて言うなら『家事は好きではないです』」と苦笑する。

 好きではないとはいえ、家事は自分の裁量でできる部分が大きい。だから窮屈さを感じずにすむのかもしれない。

 夫は協力的だが、毎日朝早く夜は遅い。夫が休日のときには家事育児を任せて、佐藤さんは夜までの仕事を入れるなど、連携をしている。貴重なコミュニケーションの場は、遅い時間の夫の夕食タイムだ。

 佐藤さんは夜型だそうだが、夕食の食器を洗うのも洗濯物をたたむのも朝だとか。頭がフル回転になる夜は、子どもと遊んだり、夫とのゆったりとした時間を過ごしたり、仕事のアイデアを練ったり、ときには事務作業をすることも。頭がまだフル回転しない朝に、洗濯たたみや食器を洗うなどの単純作業ですこしずつ脳細胞を覚醒させていく。

 「頭を使うこと」「単純作業」「体を動かすこと」「じっとしながらできること」といった仕分けをして、やらねばならないことを自分の心身の動きに合わせて粛々と終わらせていく。そこには、「朝だからこれをやるべき」といった固定観念は不要だ。

未来に希望があれば強くなれる

NHKスタジオパークにて。お出かけに行っても「みらい」につながることは何かをつい考えてしまう。

 さらに感心したのは、佐藤さんから「大変なんです」感が一向に漂ってこないこと。「仕事」と「子育て」がきっぱりと分かれているものではなく、「家族の未来を考える」という視点で一致しているためだろうか。

 「働くことは自己表現のひとつであり、自己承認欲求を満たしてくれること」と語る佐藤さんにとって、家族の未来を明るくするものが今の仕事だ。「暮らしにくいこと」があれば「暮らしやすい未来にするためにはどんなものやサービスがあればいいだろう?」と想像をめぐらすことがビジネスに直結している。その思考回路はなかなか楽しいものに違いない。すべてのやっかいなこと、面倒なこと、大変なことは未来に解決することができるのだから。

 そして佐藤さんが好きなものは「旅」「音楽」「宇宙」など、手に取って触れないものが多い。それをどうやってビジネスにつなげていこうかと考えるところもまた楽しいのだという。

 今回の「かぞくみらいフェス」でも、上記3つのテーマに関わるコンテンツを提供したいと考えている。

旅での非日常や自然とのふれあいは、子どもだけではなく大人の想像力をも豊かにしてくれる。

 未来に希望のある人は強い。いや、未来に希望があれば人は強くなれるのかもしれない。

かぞくみらいフェス
https://kazokumiraifes.jp/

Column

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2017.02.16(木)
文・撮影=HITOMINA