結論から言うと、想像以上に美味しかった!
西麻布の交差点近くに、この冬できたばかりのレストラン。あの「カンテサンス」で支配人をしていた小澤一貴さんがフロアを仕切っていると聞けば、話題になっているのも納得します。
シェフはといえば、まだ20代なのだとか。若いながらも、白金のカンテサンスの跡地にある「ティルプス」でシェフを務めていたほか、北欧の名店などでも修業を積んでいたそう。
店内は、白いテーブルクロスがかかるようなかしこまった雰囲気ではなく、12,000円のコースを出すにしてはカジュアルです。
ビルの半地下に、そっけなくドアがあるだけの入り口こそ西麻布らしい隠れ家風だけど、中に入ってしまうとくつろげる。
テーブルや椅子に落ち着いた色の木を使って、程よい温かみがあります。
お料理はお任せ。これから何が出てくるかを書いた紙すらありません。
なので、事前に、苦手なものを必ず伝えておくことが、ここの料理を楽しみきるポイントにもなります。
さて、シェフの経歴から、現代的な軽やかな料理が出てくることは想像できましたが、結論から言うと、想像以上に美味しかった!
現代的が行き過ぎて人工的でクールになることもなく、内装と同様に程よく温かみがある料理です。
一見凝ったように見えるお皿の上も、実際には無駄なものがなく、素材の数も少ない。その素材の味がきちんと残り、どれも実体のある美味しさ。
13品に及ぶコースですが、テンポよく出てくるのも偉い!
前置きが長くなりましたが、一品目からご紹介します。
●黒いひとくちコロッケ
どれが石ころでどれがコロッケ? 竹炭でつけた色が奇抜に感じますが、味は親しみやすい。ほっくりとした、おいしい普通のじゃがいもコロッケなのだから。
●干した大根
どこに大根が? と思ってしまいますが、この茶色っぽいのがそれ。紫大根を干したもので、切り干し大根をそのまま食べた時と同じ甘さ。
下にはトリュフのクリームが添えられています。
●あおりイカとコンテチーズをのせたオープンサンド
イカのねっとりした甘さとふわふわにおろしたコンテチーズが一体に。
そこにサクッとしたトーストの歯ごたえが心地いい。旨みの強いひと口に、シャンパーニュが進む!
●鶏と菊芋のスープ
口にすると、焼き鳥の味! 聞けば、鶏のブイヨンと、焼いた菊芋を合わせているそう。それぞれから出る甘さが口に波打つように広がります。
そして、もうひと口飲みたいと思わせる量で出るところがニクい。ワインは、焼き鳥にも合うというドイツのリースリングを添えてくれました。
ここまで3品のスナックとスープは、「美味しいねー」と話していると、すぐに次が運ばれるというテンポで出てきました。
少量多皿のコースにありがちなイラつきやストレスは全く感じません。そして前菜へ。
2017.02.08(水)
文・撮影=浅妻千映子