【WOMAN】
すべてが失われても
寄り添う誰かがいれば生きられる

 『ウォーキング・デッド』の作者ロバート・カークマンも、あるTVインタビューで「(状況を)事細かに理由づけするほど作りものくさくなるから、しないのだ」と語っていたが、本作でもなぜ世界が滅びたかは説明されない。

 本が好きで口が悪いチトと食いしん坊で楽観主義のユーリが進む先には、リアルな現代文明の残骸があり、祖先が遺したものへの敬意も批判も飛び出す。数多の終末モノ同様、食料や生活用品を求めてさまよっているのに、あまり悲壮感がないのは、さすが女子と言うべきか。

 少女たちは、遠くの未来より近くの幸福を、現実の悲惨さより五感の豊かさを見つめて生きる。〈もっと絶望と仲良くなろうよ〉というユーリに、チトは〈ポジティブすぎる〉と返すが、絶望との親和こそが、寂しさを乗り越える切り札だ。死の気配さえ漂う絶望の深淵をのぞき込むと、逆に、寂寥感も、命への執着さえない希望にも似た境地に、たどり着くのかもしれない。

『少女終末旅行』(既刊4巻) つくみず

あらゆる文明や情報の伝達が途切れてしまった終末世界。チトとユーリは、廃墟化した都市を愛車ケッテンクラート(オートバイと荷台付きのキャタピラーが合体したような車)で旅していく。荒涼とした風景の中で、寄り添うふたりの姿だけが温かい。Web「くらげバンチ」で連載中。
新潮社 580円

» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2017.02.06(月)
文=三浦天紗子

CREA 2017年2月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

楽しいひとり温泉。

CREA 2017年2月号

ひとりに優しい宿、増えてます!
楽しいひとり温泉。

定価780円