滋賀の山里を思わせる八寸は、盛り付けを見るのも楽しい
目の前にこれまた素晴らしい器が並ぶ。どれも信楽焼の作家の一点もの。これから何が始まるのか、子どものようにはしゃぐカウンターの面々。
できあがったのは、滋賀の山里を思わせる八寸。
八寸もまた、ここのシグネチャーだ。琵琶湖の鰻、明石のタコの桜煮と穴子、クリームチーズを挟んだ生の庄内麩、水口かんぴょう、溜まり醤油でヅケにした鰹、揚げ銀杏、玉子真薯、サツマイモの甘煮。
さらに、柿のナマスは酢が苦手な人にも食べやすいよう柑橘を使うなど、細やかな気配りまで施された品々。
「箸休めです」と、フォアグラ最中。
これも篠原オリジナル。フォアグラを一度炊き、すりつぶしたものを再度固めている。そこに杏子のコンフィチュール。絶妙の組み合わせ。
琵琶湖の鰻は、白焼きとたれ焼きで。
大きな茄子が運ばれてきた。「滋賀で採れる、杉谷茄子という丸ナスです。もう、名残の食材でございます」。祖母のレシピというイリコ出汁で炊いたもの。家庭料理といっていたが、実に洗練された味付けであった。
モダンな皿がずらりと並んだ。溶岩を使った作家ものだ。ダイナミックな器には、それに相応しい一品が盛りつけられる。
出てきたのは、三雲の猪。原種に近い猪だそう。そのモモ肉を香ばしく炭火で編焼きにしたところに醤油ベースの特製タレ。噛めば噛むほどうまみが口のなかに広がる。
ここでまた箸休め。イチジクの胡麻味噌焼き。チーズのニュアンスを感じるひと品で、これもうまい。
2016.11.21(月)
文・撮影=Keiko Spice