ハワイらしい大味で、大盛り、アバウトな料理

 次にハワイのローカルフーズ「ロコモコ」を比べてみよう。

 誕生は1940年代後半、ハワイ島ヒロの町。レストラン「リンカーン・グリル」隣にある公園で、フットボールの練習をしていた一人の少年が注文したとされる。

 ハワイらしい大味で、大盛り、アバウトな料理であるが、最近は変形があちこちで誕生しているらしい。人気の二軒をチェックしてみた。

ホノルルのホテル街の中心にあるヘブンリー。

 一軒はホノルルのホテル街の中心にある「HEAVENLY(ヘヴンリー) ISLAND LIFESTYLE」。地元産オーガニックな食材を使った食堂である。こちらのロコモコは、豆を混ぜた五穀米の上にハンバーグがのせられている。

豆を混ぜた五穀米の上にハンバーグがのせられている、ヘブンリーのロコモコ。

 ハンバーグの相手が五穀米だと、どうも食欲喚起力が減衰するが、ロコモコとなら実に合う。パラリと炊かれた五穀米と、濃すぎないソースや肉汁との相性がいい。

 途中でハンバーグを砕いて、米と豆をよくよく混ぜて食べてもみたが、その渾然とした味も楽しい。添えられたキヌアやアボカド、ケールなどを箸休めにつまみながら食べると、さらにバランスがいい。

 ロコモコが、ヘルシーにもなりえて、しかもおいしいという真実が、進化である。

地元産オーガニックな食材を使ったヘブンリーのサラダ。

 この店では、ロコモコのほかにアサイーボウルやサラダ、ニンジンジュースもおすすめである。

ハワイカイ地区のココマリーナセンターにある、モエナカフェ。

 もう一軒は、ホノルルから車で10分。ハワイカイ地区のココ・マリーナ・センターにある「Moena CAFE(モエナ カフェ)」。こちらのロコモコは、肉が挽き肉のパテではなくショートリブで、ご飯が炒飯という組み合わせである(白いご飯も選べる)。そしてソースがデミグラスではなく、甘辛い照焼き風。つまり照焼き風牛肉のせ炒飯、目玉焼きのせという味なのである。

モエナカフェのロコモコは、肉がショートリブで、ご飯が炒飯という組み合わせ。

 このこてこて具合というか、下品さの振り切りがいい。ロコモコの中途半端な感じがなく、一つの料理としての個性がある。これもまた一つの進化なのである。

ソースが甘辛い照焼き風なのがモエナカフェのロコモコのオリジナリティ。

モエナ カフェ
http://www.moenacafe.com/

<ワイキキのホテル街とハワイカイ地区>

 ワイキキで観光を楽しむ人々のほとんどはカラカウアアベニューとクヒオアベニュー周辺にあるホテルを利用するだろう。「モアナサーフライダー」も「ロイヤルハワイアン」もカラカウアアベニューに面した老舗ホテル。「ヘブンリー」はこのふたつの通りのあいだに出来たカフェで、ワイキキの中心部に位置する。いっぽう、「モエナカフェ」のあるハワイカイ地区はオアフ島南東部にあり、ホノルルマラソンの折り返し地点として有名である。ココ・マリーナ・センターは高級住宅街の中にあるショッピングモール。

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

Column

マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。

2016.09.08(木)
文・撮影=マッキー牧元