星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル (後篇)

 星野リゾートの旅が気づかせてくれるのは、地方の魅力と新しい観光のあり方。新シリーズ「日本を遊ぼう!」が最初に取り上げるのは、十和田八幡平国立公園にある奥入瀬渓流のほとりに建つ「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」。後篇ではいよいよ奥入瀬渓流に向かい、その美しい流れと濃い緑が育んだ、驚きの苔の世界に迫ります。

渓流散策の前夜に「森の学校」でまず予習!

そこに身を置くだけで癒される緑の奥入瀬渓流で、驚きの苔の世界を知る。

 奥入瀬渓流は、国の特別名勝かつ天然記念物。その水源は、澄んだ豊かな水を誇る十和田湖だ。ホテルから、奥入瀬渓流をたどって十和田湖まで行く散策ルートは、全長約14キロ。そのほとんどが特別保護地区に指定されているので、植物等の採取は一切禁止などの厳しいルールもある。

 散策前日、ホテルで夜2回、無料で開催される「森の学校」に参加して、奥入瀬渓流をどう歩くかについてのレクチャーを聞く。私が参加した回は、翌日の有料アクティビティである“苔さんぽ”でもガイドを務める“苔メン”こと丹羽裕之さんが講師で、満席になる人気ぶり。

夜に西館ラウンジで開催される「森の学校」。奥入瀬の歩き方や、苔の見方のレクチャーも人気。

 雪解け水など山からの清流が貯まった十和田湖が奥入瀬渓流の美しい流れの源であること。この水と、ヤマセという太平洋側からの冷涼な湿った風が発生させる海霧が苔を育んでいること。日本で約1800種あるといわれる苔のうち、約300種はこの奥入瀬渓流に自生していること。などなど、興味深い話が続く。その最中に見せられた、苔などをルーぺで覗いた美しい写真に、驚きの声が上がる。

“苔メン”が撮影した美しい粘菌、ツノボコリの写真。(C)丹羽裕之

 上流から下流までの特徴や、渓流の水しぶきや表情を見るため下流から上流に歩くこと、そして全部を歩き通すのはたいへんなのでバスを上手に利用することなど、歩き方のコツも教えてくれる。

 明日は、森を楽しみながらじっくりと苔を観察して散策する苔さんぽ(大人1名4,320円)に参加。どんな世界が待っているのかワクワクする。

2016.07.31(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵