すぐWikipediaに頼るのはオジサンの証拠?
伊藤 80~90年代のサウンドは古いなんて簡単に言ってると、逆にこっちが古くなってる可能性もある。だからこそアンテナを高く立てていないと。特にクリエイターは開拓者であるべき。刻一刻と前進しているトレンドをつかんで、新しいファッションを発信していないと、すぐに時代に置いていかれちゃうから。
山口 その通りですね。僕は「音楽プロデューサー」という肩書を名乗っている限りは、現役で10代の子の失恋や夢に触れられる感覚は持っていたいと思っています。逆にいえば、それが無理だと思ったら、プロデューサーからは降りると決めています。そんな危機感を持っていることが大事かなと。
ちょっと話が逸れますが、今回、“ぼくりり”をチェックしていて気づいたのですが、Wikipediaの情報が薄い。運営側から問題点が指摘されているという不安定な状態で、このまま放置すると削除されるかもしれない。デジタルとの親和性が高いアーティストとしては対策をうたないとマズイ! と僕なんかは職業的に思ってしまうのですが、待てよ、もしかしたら、ネット上の情報はまず、Wikipediaというのが、既に「オジサン感覚」なのかもしれないなとも思って不安になりました(笑)。しばらくの間、10代の子に会ったら、Wikipediaをどんな風に捉えているか、訊いてみようと思います(笑)。
さて、今回の妄想分析はどうなりましたか?
伊藤 影も生まないような真っ白な世界に忍び込む。どうしてもぼくが手に入れたいものが此処にはある。すっかり空想というドラッグに、頭をやられちまったヤツからそう聞いた。そんなヤツのいうことなんて本当は信じてなんかいないと思う、だけど信じていないことにリスクを負う、そんなことがエモ。
108時間ほど無と無の中をあるいて、やっと何かを見つける。言葉だ。立体感のない真っ白な天井、まるで青くない空に真っ黒な雲が描いたような言葉。だけどエッジの効いていて艶のある言葉。Wow、この言葉は見たことないかも、意味も知らないかも、今まで存在していなかったのかも……ってことはこの言葉は今、ぼくのもの? まじでエモ。
山口 新鮮な刺激を受けていますね。ウルトロン世代に負けるな、アラフォー世代(笑)。
ぼくのりりっくのぼうよみ『ディストピア』(「Newspeak」収録)
コネクトーン/ビクターエンタテインメント 2016年7月20日発売
初回限定盤1,600円、通常版1,200円(税抜)
■ぼくのりりっくのぼうよみは、2016年春に高校を卒業し、現在は大学1年に在学するラッパーにしてヴォーカリスト。「文學界」2016年3月号には初のエッセイを寄稿するなど、活動の幅を広げる。このEPの初回限定盤には、“ぼくりり”本人が書き下ろした短編小説と次作アルバムに関するアイディアノートが封入される。
■「Newspeak」作詞/ぼくのりりっくのぼうよみ 作曲/にお、ぼくのりりっくのぼうよみ
■オフィシャルサイトURL http://bokuriri.com/
2016.07.15(金)
文=山口哲一、伊藤涼