“民藝SHOCK!!”後の河井寬次郎
1924(大正13)年に河井が濱田に再会してから、徐々に作風が変わっていきました。例えば、それまで作品には、「鐘渓窯」という寬次郎が焼き物を焼いていた窯の印を押していたんですけど、「中国の優れた焼き物には印など押していない、有名(銘)より無名(銘)が優れている」ということで、作品に判を押さなくなりました。また、生活用の器、食器として使えるような鉢やコーヒーカップなど、そういうものを作るようになってきた。大きく作風が変わったのは、1925~26(大正14~15)年頃だと思います。
柳と仲良くなってからは、柳や濱田と一緒に京都周辺で骨董市めぐりなどもしてるんです。そのときに出会った瀬戸で作られた雑器などにも影響を受けて、自分の作品に活かしています。
あとは、たとえば英国のスリップウェアをみて、同じような装飾の技が日本の丹波焼や上野焼でも見られることに気づいて、日本のスリップ(化粧土)の技術を研究して、また新しいものを作っているのも面白いですよね。ものを見て再現するだけじゃなく、いろいろ自分が見聞きして学んできたことを作品にのせていっている。
私が見ている限りの話ですが、河井寬次郎は、感動したものに真っすぐに向かっていって、技術をしっかりと勉強して、咀嚼して作品作りに生かしているようなところがありますよね。
一般的に、彼の作品は、「民藝と出会って作風が一変した」などと言われることが多いのですが、実際はそうでもなくて、若い頃に抱いた朝鮮陶磁や中国陶磁への憧れというのはずっと残っていると思います。中国陶磁の造形や技術が、いわゆる民藝後、昭和初期の作品にも洗練されたかたちで現れているんですよ。今回の展覧会はそういった部分をフィーチャーしてますので、ぜひ足をお運びください。
※掲載作品はすべて静嘉堂文庫美術館の所蔵品です
山田正樹(やまだ・まさき)
静嘉堂文庫美術館 学芸員。東京生まれ、成城大学大学院にて東洋美術を専攻。専門は中国陶磁。静嘉堂文庫美術館にて「二つの頂―宋磁と清朝官窯」(2023年)、「超・日本刀入門REVIVE」(2024年)、「黒の奇跡―曜変天目の秘密」(2025年)などの企画を担当。
「民藝SHOCK!!―没後60年 静嘉堂の河井寬次郎」
会期:2026年9月5日(土)~11月8日(日)※会期中、一部作品の展示替えあり
会場:静嘉堂文庫美術館(東京都千代田区丸の内2-1-1明治生命館1階)
休館日:毎週月曜日(ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館)、9月24日(木)、10月13日(火)
開催時間:午前10時~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで ※9月23日(水・祝)、10月28日(水)は午後8時まで、11月6日(金)、11月7日(土)は午後7時まで開館)
料金:一般1,500円 大高生1,000円 中学生以下無料
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.seikado.or.jp/
