モクテルペアリングってこういうことなんだ!
ダイニングに席を移し、いよいよコースの開幕です。一皿目は「鯉とビーツのレゾナンス」。鯉は“水のジビエ”を標榜するユカワタンの主要な食材のひとつです。コリコリとした歯応えの生と、ふわっと軽い燻製の2種類を使い、クリーミーな白ワインのソースを絡め、仕上げにビーツのソースが注がれます。
合わせるモクテルは、白ブドウとビーツを2層にし、コリアンダーの香りを効かせたもの(写真上)。フルーティでほのかに甘く淡い味わいが料理と響き合う、王道的ペアリングです。
続く「山女魚のミキュイ サフランの香り」には、シャルドネ、しょうが、トマト、オレンジのモクテル。旬の素材をブーケに仕立てた「初夏の恵み」には、ほおずき、トニックウォーター、スパイス塩の一杯を。猪と鹿を使った「ジビエのコンソメ」には、黒文字、りんご、紅茶を詰めたティーバッグの温かいドリンクが寄り添いました。
メインの魚料理は「岩魚のクリスティアン ナージュ仕立て」。合わせる一杯は、ヴェルモットにレモン、レモンバーベナを微発泡水で割ったモクテルです。アーモンドの衣をまとった岩魚の旨みやほろ苦さ、山の香りが、モクテルの香りやほろ苦さと呼応する、野趣に富むペアリングでした。
メインの肉料理は「鹿のロティ コンソメ・ド・シュヴルイユ」。山と草のニュアンスを感じる夏鹿の赤身肉に、鹿の骨やスジから取ったとろみのあるコンソメを添えた一品です。合わせるドリンクは、赤ワイン、マデラワイン、杏のフレーバーを重ねたモクテル。見た目も味も間違いのない取り合わせで、メインとして十分な食べ応えがありました。
デザートは、杏のソルベとコンポートに、アールグレイのアイスクリーム、ローズマリーの泡を添えた「杏とローズマリーのコンビネゾン」。ドリンクは、スパイスが香るエピスカフェモカです。旬を迎えた信州の杏にハーブとスパイスが重なり、最後はふっと力が抜けるような、やわらかな余韻で締めくくられました。
いまどきのファインダイニングなら、どこでもノンアルペアリングがありますが、モクテルはワインの代わりであって、ペアリングもワインと同じロジックで考えられているのだと思っていました。
でも、このイベントを通して感じたのは、モクテルは料理を引き立てる飲みものであるのと同時に、料理を構成するパーツ、付け合わせに近い存在にもなり得るということです。グラスの中の要素が、料理のソースや付け合わせと同じレイヤーで響き合う――そんな新しい楽しみ方に気づけたことも、この会の大きな収穫でした。
