一杯と一皿に、同じ手のぬくもりを感じて
コーヒーをひと口飲んで、まず驚いたのは、その口当たりだった。苦味はあるのに、角がない。するりと舌に触れ、やわらかく広がって、あとから余韻が残る。
イチゴのショートケーキは、ふわりとしたスポンジ、やさしい甘さのクリーム、イチゴの瑞々しさ。それぞれが主張しすぎず、けれどきちんと記憶に残る。
ケーキをひと口食べ、コーヒーを飲む。すると、甘さのあとにほどよい苦味が寄り添い、苦味のあとにまたクリームの余韻が恋しくなる。
ケーキとコーヒーが、どちらかの引き立て役になるのではない。この午後のひとときでは、間違いなく、どちらも主役だった。
そして、このケーキを作った人。コーヒー豆を焙煎した人。その豆を挽き、目の前で淹れてくれてくれた人。
そのすべてが、同じひとりの人であることにも、私はとても惹かれた。
“縁”が結ばれて生まれた場所
「TIES」という店名は、繋がりや結びつき、“縁”に由来して名付けられたという。その名にふさわしく「TIES」はいくつもの縁に支えられながら、少しずつ今の形になっていった。
ここ湯島に店を構えたきっかけも、そう。もともとは鎌倉に出店する構想を練っていたが、奥さまの通院をきっかけに本郷へ通うようになり、この土地に店を構えることになったという。
そして、現在の心地よい内装も然り。雑誌で見たある店舗のデザインに心惹かれ、その設計を手がけた会社に電話をかけたものの、飲食店は専門でなかったそうで、一度は断られたのだそう。ところが、しばらくたったある日、その話を聞いた建築家ご本人から「会社は断ってしまったみたいですが、まだ話が進んでいないならやらせていただきたい」と連絡が入り、念願だった内装を任せることになったのだとか。
坂爪さんは、それを「縁」だと話す。
「ご縁、ご恩、人間関係。店とか商売だけじゃなくて、人生においても、それが大事だと思うんですよ。」
慣れた手つきでコーヒーを淹れながら語ってくれた。
嬉しいことがあった日。誰かとの縁に感謝したい日。この店に来たら、その喜びを静かに味わえる気がする。
そして、何かがうまくいかなかった日にも。
思いがけないところから縁が繋がり、新しい場所へ導かれることがある。「TIES」で過ごす午後は、そんなことを静かに思い出させてくれる時間だった。
湯島の小さな喫茶店「TIES」。
ここは、コーヒーとケーキを味わう場所であり、坂爪さんの手仕事に会いに行く場所であり、そして、人生で結ばれてきた縁の大切さをふと思い出し、心を温められる場所。
ネルで淹れたコーヒーの余韻と、イチゴのショートケーキの甘さ、そして坂爪さんの「ご縁」という言葉が、店を出たあとも、胸の中で静かに温もりを残していた。
TIES
住所:東京都文京区湯島4丁目1−13 倉林ビル 1F
営業日:基本は金土日の営業、詳細はInstagramなどでチェック
営業時間:12:00-17:30(L.O.17:00)
公式Instagramはこちら
