ジェーン・バーキン、サガン、イヴ・サンローラン……。パリファッション界の伝説たちとリアルに交流してきた村上香住子さんが、パリジェンヌの「凛とした心」をまとうためのエッセンスを記したエッセイ集『おしゃれなマナー AtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔』(CEメディアハウス)。同書の一部を抜粋し掲載する。
女性の泣き寝入りは美談とされない
恋愛至上主義のパリでは、セーヌ川の河岸を見ても、どこもかしこも老いも若きも恋の花ざかり。フランス語にはキスが好きな人を表す「アンブラスール〈Embrasseur〉」という名詞まであるくらいです。そうした恋愛体質の人が大半なので、それなりに別れるカップルも多いようです。
友人の娘でリセ(日本でいう高等学校)に通っている子は、級友たちに「あなたの家、パパもママンもまだ離婚してないの? 変わってるね」とからかわれたといって嘆いていました。クラスの大半が離婚体験家庭なのだそうです。
フランスはカトリックの国だから、どこへ行っても家族中心で、カップル単位のようです。たとえばシングルの私が友人の家に夕食に招待されると、友人は招待客がちゃんと偶数になるように、大抵いつも独身男性を一人招んでいました。そうした男性は私を家まで送り届けるのがマナーだと思っているらしく、自宅までついてくるので閉口したものです。
そんなお国柄、職場恋愛の噂もよく耳に入ります。私がフランスで仕事を始めた頃、少し前に任命された編集長は、かつて既婚者である発行人の恋人だったという噂が流れていました。
真偽のほどは分かりませんが、その後耳にした話からしても、どうやらパリジェンヌは泣き寝入りなんかせず恋の駆け引きが巧みなのではないか、というのが私の結論でした。恋人としては破局しても、仕事でポジションを得る。要するに女性が泣き寝入りをするのは、パリでは美談ではないのです。
