ジェーン・バーキン、サガン、イヴ・サンローラン……。パリファッション界の伝説たちとリアルに交流してきた村上香住子さんが、パリジェンヌの「凛とした心」をまとうためのエッセンスを記したエッセイ集『おしゃれなマナー AtoZ パリで暮らして知ったミューズたちの素顔』(CEメディアハウス)。同書の一部を抜粋し掲載する。
フランス人の男性は、とにかくお世辞が上手です。相手が中年おばさんだと分かっていても、マダムとは言わずに「ボンジュール、マドモワゼル(お嬢さん)」と平気で言うのですから。
あるときサンジェルマン大通りを女友達と歩いていたら、彼女は正面から来た男性にうっとり見つめられて、こう言われていました。
「モーツアルトの曲を絵に描いたら、きっときみみたいな女性になるだろうな」
やけに気障なお世辞でした。
そんなパリジャンは、どんなにちょっとしたきっかけも見逃しません。
あるとき、私の自宅に間違い電話がかかってきたことがあります。違います、ノン、と言って電話を切ろうとすると、相手の男性は、
「ちょっと待ってくれますか。あなたの声、僕は滅茶苦茶好きだなあ。これは運命だ。ぜひ会ってほしい」と言いだしたのです。こうして日常的な出来事も、言葉巧みに利用します。
