日本でもっとも線香が生産されている土地、淡路島。そんな香りの島に10年前東京から移住し、植物やハーブと対話を重ねながら多くのプロダクトや空間の香りを手掛けてきたアーティスト・和泉侃(いずみ かん)。昨年スタートしたオルタナティブレーベル「SCEN(セン)」の拠点がこのほど淡路市内に誕生した。
この地で10年間香りに向き合ってきた和泉氏がエッセンシャル・ジンを通じ描くビジョンや、地域振興の在り方を伺った。
》【後篇】「香りが人間の原初的感性を蘇生する」香りの島・淡路島に誕生した「SCEN」を手がける和泉侃の原点とはを読む
» 印刷所をリノベーション、地域と溶け合う香りの拠点
» 調香の領域からアプローチしたオリジナルジンが誕生
印刷所をリノベーション、地域と溶け合う香りの拠点
――なぜ、この場所で初の店舗をオープンするに至ったのでしょうか。
和泉侃さん(以下、和泉):10年前、総務省の「地域おこし協力隊」という制度を通じて、淡路島に移住したことがそもそものきっかけです。定着・定住することと、地域のブランディングを条件に東京から淡路島へ移住しました。近年は東京からの移住者も増えているようですが、当時は少なく初めはいつまでこの土地にいるのかわからない“よそ者”としての日々。しかし淡路島に向き合い活動を重ねていくことで、いつの日からか地域の人たちが仲間とみなしてくれて、応援してくれるようになっていたんです。
ひとところに根を張り、土地や人に愛着を持つーー。東京出身で、これまで帰属意識を感じたことのない僕が人間らしくなれたのはこの町のおかげ。自分のお店を持つならこの町でと心に決めていました。
そんなときです、当時空き家となっていたこの物件と出会ったのは。ここは元々印刷所で、街のシンボル的存在でした。取り壊しも検討されたこともあったそうなのですが「再び誰かが活用するその日までそのまま保存しておくべきだ」との想いから大切に保存され続けていたんです。
ちょうどチームが拡大によりオフィスが手狭になってきていたこと、何よりお客さんと直接コミュニケーションが取れるショールームのような場所が欲しいとかねてから考えていたタイミングでしたので、この2点が叶えられる絶好の機会を逃すまいと、ここを店舗にする決意を固めました。
――どのような営業スタイルで運営されているのでしょうか。
和泉:金土日のみの営業で、昼間はストア、夜はBARへと姿を変えます。昼間はこれまで手掛けてきた香水やお香などの商品を実際に手に取って頂ける場所として、夜のBARは立ち飲みスタイルでSCENのエッセンシャル・ジンや淡路島で製造している蒸留水を使ったカクテルなどを提供しています。
日々遊び心を加えながらアップデートしていますので、来る度に新しいアイテムやメニューとの出会いがありますよ。
また、「SCEN」は “scent(香り)” に由来する造語で「泉・線・巛(せん、川の流れる様子を象った象形文字)」の意味を持ち合わせています。泉は、香料や香水の最もピュアで純度の高い源泉の部分のこと。それが人と人との関係を結ぶコミュニケーションの線となり、集まったものが最後には巛の流れのように広がってゆく。そんなイメージが込められています。
