ローラとソーンが過ごす時間を観察

 2頭が動き出したのは、お昼を過ぎてから。まず、ソーンがむくりと体を起こして歩き始めます。少し経って目を覚ましたローラはソーンを静かに目で追いながらも、体は動かさず。ソーンはそんなローラの様子を、ちらりちらりと確認。近くまで歩み寄った時は鼻をふるると鳴らしながら、自身の顔をローラの顔にスリスリ。ローラは舌をちょっと出して甘えるような表情を見せます。

 しばらくの間、静かに過ごしていたローラですが、ソーンが遠くまで歩いていくのを見て、ついに体を起こします。そろそろりと近づき、ソーンが背中を見せた瞬間、一気にダッシュしてアタック! 背中の上に乗りたかったようですが、するりと交わしたソーンは立ち上がってローラと向き合うと、口を大きく開けて威嚇。ローラも軽くパンチしながら、応戦します。

 このやりとりを何度か繰り返しているうちに体が熱くなったのか、ソーンは水の中に入って泳ぎ始めます。その泳ぎに合わせて、地上を並行に歩くローラ。何往復もしますが、一向に水場から上がる気配のないソーンに、ローラは追うのを諦めて座り込んだり、放飼場に置かれていた骨に噛み付いたり。ソーンが水場から上がってくると、再び走り寄って、ちょっかいをかけていました。

「発情期以外、ほかのシーズンは5秒、10秒と、少しずつ会わせていきました。

 最初に2頭を放飼場に出した時は、ローラがぐいぐいと行きすぎてソーンが嫌がって逃げることも多かったんですが、お互いがお互いの存在に慣れたので、今はまったりと過ごす時間も増えてきました。

 以前はローラがちょっかいをかけ続けるため、ソーンが疲れているなと感じた時は同居をやめていましたが、最近はお互いに距離感が掴めてきたのか、双方とも以前よりリラックスして過ごしています。

 人間の感覚だと1頭で過ごすよりも2頭で過ごす方が良いように考えがちですが、トラは元々が単独生活であるため、必ずしも複数頭が一緒に過ごすことが良いとは限りません。

 ただ、動物園の場合、隣の部屋に自分以外のトラがいるのは、匂いや気配、鳴き声でもわかっているので、闘争やストレスにならず安全に同居が行えるのであれば同居させてもいいのかなと考えています。

 2頭で放飼場に出ることによって、運動量が増えたり、コミュニケーションが取れて暇な時間が少なくなるメリットもあるので、一緒にいたそうにしている時は同居させています。

 ローラはいつでもソーンと一緒にいたいタイプですが、ソーンの方は今日は1頭で過ごしたいという日もあります。なので以前は同居の頻度は少なめでしたが、最近はソーンの方がローラの部屋で待っている日もあったりと、お互いに会いたがる素振りを見せる日が多いので同居している日が増えています」(川崎さん)

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