“忘れない”よりも“回復する物語”を描きたかった

――描き始めてから気づいたことなどはありますか?

 そうですね。連載を開始してすぐに読者の反響を受けて、レジリエンス(困難や逆境に直面した時に、しなやかに立ち直り回復する能力や力のこと)を主体に描こうと考えたことでしょうか。

 当初は「震災を忘れない」「震災を知らない子たちに向けて描こう」という気持ちが強かったんです。でも、被災者もそうでない人も、亡くなられた人や被害を受けた方にみんな何かしらの負い目を負っていて、そのことに傷ついているという実感があって。本当にみんな深く傷ついていて、そこから復活しようとする途中なんだと。

 心の傷ってかんたんに癒えるものじゃない。それなら、多少でもみんなの心が回復するような作品にした方がいいと。それで幽霊たちが楽しく過ごすとか、亡くなった方が天国に行くといった描写を増やしましたね。

――亡くなった方が天国にのぼっていく描写には救われる思いです。

 助かった人は、死者に対して申し訳ないという気持ちを持ち続けてしまうんです。「私がこうしていたらあの人は助かったのでは」「私が働きに出ていなくて家にいたら娘を連れて逃げられたはず」とか……どこまでも遡って悔やんでしまう。

  『cocoon』で沖縄戦の取材をしていたときもそうでした。生き残った人は「なぜ私は生き残ってしまったか」「あのときあの子といっしょに逃げてあげれば」と思い続けているんです。亡くなった人はあなたを恨んだりしていないよ、と伝えたいですね。震災の全容を知りつつも、癒されるような作品にしたいと思っています。

――子どもが読むことも想定して描いているのでしょうか。

 はい。小学1年のここなちゃんと同じくらいの子どもでも読めるように描いています。その世代は震災を知らないけれど、きっと彼らは知りたいと思うんですよ。物語として読めて、何が起こったのかを知ることができる……そういう作品になればと。

――これから先の展開について、お話しできる範囲で教えてください。

 今は震災の序盤の段階なので、みんな亡くなった方のことを探したり思ったりしているシーンが中心ですが、だんだんそうではなくなっていく。そのとき、ここなちゃんはどういう気持ちになるのかなと考えています。また、きなことや千代子さんとの関係がどうなっていくのかもよく考えて描きたいですね。

次のページ 「猫とは“あっさりした感じの同居人”の関係です」