仏像マニア垂涎の美術館と絶景レストランへ

平安時代に造られた「薬師如来坐像」の後ろにずらりと並ぶのは、「十二神将立像」。大型なうえに12体揃っているのはとても貴重。

 三島市と神奈川県の間にある函南町は、近隣都市のベッドタウン。これといった観光スポットがないこの街の山間に、2012年にオープンしたのが「かんなみ仏の里美術館」だ。

 ここは、歴史的、文化的に重要かつレアな仏像を見ることができるミュージアム。仏像マニアにはたまらないスポットだし、そうでない人も、ボランティアガイドの丁寧な説明に、気づけば夢中になってしまうはず。

左:歴史年表を記した木簡時間尺。歴史の流れをさっとおさらいしてから仏像を鑑賞すれば、より心に響くはず。
右:鎌倉時代の天才仏師、運慶の兄弟弟子と考えられる實慶が手がけた「阿弥如三尊像」。こんな貴重な仏像が、里山でひっそりと守られてきたことにも驚かされる。

 街中ではなく静かな里山に造られたのには理由がある。もともとこの地には、平安時代に建てられたという寺があり、多くの仏像があった。1000年以上の時を経て残ったのが24体の仏像。

 信仰心の厚い村人たちは、廃仏毀釈(明治維新の頃に行われた仏教排斥運動)の際も、これらの仏像を集落と離れた場所にある寺に預け、大切に守り通したという。廃仏毀釈が下火になった明治30年代後半、村人たちは集落にあるお寺の境内に薬師堂を立て、そこに仏像を安置。2008年、それらが函南町に寄付されたことが、この美術館の始まりだ。

美術館のお寺のような外観は、仏像が安置されていた薬師堂の佇まいを継承しているのだそう。

かんなみ仏の里美術館
所在地 静岡県田方郡函南町桑原89-1
電話番号 055-948-9330
営業時間 10:00~16:30
休館日 火曜(祝日の場合は営業、直後の平日休)、12月29日~1月3日
URL http://www.kannami-museum.jp/

 仏像美をたっぷりと堪能した後は、同じく函南町にある絶景レストランでランチを。

目の前には、必要以上の手を加えない自然豊かなガーデンが。この眺めもごちそうだけど、たとえ曇っていても、料理を食べれば幸せな気分になれるはず。

 富士山を望む緑の中にある「ビブラ ビブレ」で食べられるのは、店の前に広がる広大なガーデンで育てた野菜やハーブ、フルーツ、箱根山麓の豚や駿河湾の魚、ジビエなどを使った料理。化学肥料や農薬を使わない自然農法による野菜を味わう料理は、心身を元気にしてくれる。

ランチのパスタもカレーも、自然農法の野菜がたっぷり。

 オーナーがこの地に店をオープンしたのは、日照時間の長さが全国でトップクラスを誇り、土も水もいい環境に惹かれたから。当然、育つ野菜もとびきりおいしい。もともとここになかった野菜はフランスから種を取り寄せ地元の契約農家に生産を依頼、牛乳は酪農家まで直接出向き購入しているのだそう。

デザートピッツァ(左)とミルクプリン。食後のデザートは見た目でも楽しませてくれる。

 テーブルには、地下170メートルから汲み上げた天然水が用意されている。ワインが恋しくなってしまう料理ばかりだけど、ドライブ中ならこのおいしい水で大満足。住宅街から離れているうえ見つけにくいロケーションにありながら、満席必至。利用の際はぜひ予約を。

Vivra Vivre(ビブラ ビブレ)
所在地 静岡県田方郡函南町平井12-1
電話番号 055-979-5656
営業時間 11:00~14:30(L.O.)
定休日 月・火曜(祝日は営業。振替休日あり)
URL http://vivra.net/

2016.03.23(水)
文・撮影=芹澤和美