アラビック・インテリアのヒント満載のホテル

随所に飾られたアンティークは、周辺のアラブ諸国から求めたものだとか。精緻を極めたシンメトリーの刺繍のタペストリーに、タッセルの長さをアシンメトリーにして“ユルさ”を表現。

 「ワン&オンリー・ロイヤルミラージュ」の素晴らしさは、ハード、ソフトともにいろいろあるのだが、このホテル、どこを切り取っても絵になる。シックながらも贅を凝らしたディテールもさすがなら、周到に計算し尽くした採光による見事な演出にはウナる。見落としそうなコーナーであろうと決して手は抜かない。まさに“美は細部に宿る”という設えは、大いに自宅インテリアの参考になること間違いない。

生花のアレンジメントがふんだんに飾られているのも特長。生花を維持するのはとても手間暇コストのかかるものだが、こうした贅沢がホテルをアップスケールしている。ゴールド使いばかりがラグジュアリーではないのだと言わんばかりデス。
小物の飾り方、透かし細工を使った採光法、透け感を活かした遠近法……。注意深く見ていくと、このホテルにはさまざまなインテリアのヒントが隠されている。

 もちろんホテルの魅力的なインテリアすべてを真似することはできないが、色使いだけでも参考にすると、エキゾチックアラブな雰囲気を自宅に演出するのに役立ちそうだ。例えば、紫。一歩間違えたらとんでもなく下品になりそうな色だが、分量のバランス、素材感のチョイスに目を向ければ、上級インテリアに挑戦できそうに思う。

「ザ・パレス」の部屋の紫を使ったインテリア。補色のグリーン系のクッションと同色系のピンクの使い方に注目。家具の濃いめのブラウン使いもポイントだ。
左:素材のテクスチャーに注目。柔らかいスタッコの幾何学柄、曲線のアイアン使い、アラベスクな絨毯……。シルクの紫とガラス素材のスタンドがクールにマッチング。
右:「ザ・パレス」にはビーチに向けて、こんな空間が。手前の噴水越しに眺めると、アルハンブラ宮殿のヘネラリフェを思い出しません? もちろんアルハンブラでは、海抜けにはならないが。

 そして自宅再現かなわぬのが、ホテルのアラビックな空間。緻密なモザイクタイルや、キリスト教文化とはひと味違うヴォールト(天井のアーチ)の形、ゴールドの色使い。この辺りは建築家やデコレーターの意図を探る面白さを楽しみたい。どこが洗練されているのかを見極めるのも遊びのひとつ。いままで訪れた歴史的な建造物の記憶をたぐりつつ、リソースを探してみよう。

左:アンティークのシーシャ(水パイプ)が飾られた空間。黄褐色の土壁に赤の組み合わせは、アラブ的色使い。
右:「アラビアンコート」の回廊。ヴォールトのカーブといい当然のアラブなのだが、色使いのせいかとてもシック。広く取られた+窓から射し込む光が、居心地のよさを演出する。

2015.08.18(火)
文・撮影=大沢さつき