歴史が刻まれた興味深いエリア「ロシア風情街」

 「北方の真珠」「アカシアの街」「北の香港」。そんな愛称をいくつも持つ大連は、中国東北地方最大の都市にして、豊かな自然と温和な気候で知られる沿岸部の街。中国旅行というと上海や北京が思い浮かぶが、ここ大連も、旅情を誘う美しい風景にあふれた、魅力的な旅先のひとつだ。

雰囲気あるヨーロッパ建築と近代建築が共存する大連の街並み。

 良好な港を持ち貿易で栄えたこの街は、中国の中でもいち早く外国文化に触れてきた場所。その名残が、ロシア風情街。ここは、1898年に清朝から大連を租借したロシアが、ロシアの伝統的な設計にならい都市開発を進めた最初の地。ちなみに、大連という名前は、ロシア語の「はるか遠い」を意味する「ダリーニ」の音訳に由来するのだとか。1905年に大連の租借権は日本に渡り、ロシア人が定住することはなかったものの、ロシア建築の建物はそのまま残された。

ここ数年で古い建物の壁が塗り替えられたが、雰囲気は変わらずロシア風。

 近年の再開発によって、建物はリノベーションされたり塗り替えられたりなど、大々的にお色直し。現在、全長約430メートルの通りは、土産物店やチェーンのホテルが並ぶ観光地と化しているが、その中にも、歴史文化遺産として、古い建物はひっそりと残されている。エリア全体はロシア風テーマパークのような雰囲気もあるが、歴史的背景を知って歩くと、なかなか面白い。

ロシアの雑貨や大連名物を売る土産物街の奥にある古びた建物は、ロシア統治時代の旧市役所。日本統治後は南満州鉄道の本社、大連ヤマトホテルと引き継がれ、戦後は大連自然博物館として利用されていたが、1998年以降は未使用の廃墟に。

 このロシア人風情街のほかに、南にそびえる南山の麓には、旧日本人街と呼ばれる場所もある。日本統治時代、日本人将校や家族などが暮らしていたエリアで、今は地元のリッチな人たちが暮らす高級住宅街。ここで昔の面影を見ることは難しいが、市中心地にある「大連現代博物館」に行けば、古い街並みのジオラマや写真で、当時の様子を知ることができる。

日本統治時代の展示物も多い大連現代博物館。昔を偲ばせるジオラマも。

2015.03.25(水)
文・撮影=芹澤和美