旅館道 その3
「和と洋、おこもりとレストラン。食の楽しみ方はさまざま」

「ユカワタン」では、料理の最初のアミューズで誰もがまず驚かされる。石の上にのった1個ずつの料理は、懐石料理にインスパイアされたもの。コースのアミューズからデザートまでをたどり、石の温冷も料理に合わせている。左から「洋梨の上にニジマスのマリネ」「のりとシソ、銀ヒカリを紅芯大根で巻いて」「ピーナッツのポタージュスープ」「雪マスのブランダード」「子羊のソーセージ」「クルミと山ブドウ、鶏レバーのチョコレート」。

 「星のや 軽井沢」では、さまざまな食事のオプションを楽しめるように、宿泊と食事の料金は別々の形式を取っている。敷地内のメインダイニングである日本料理「嘉助」、ルームサービス、敷地から出てホテルブレストンコートのメインダイニング「ユカワタン」、また村民食堂やハルニレテラスなど、選択肢が多い。

花が咲いたような紫ダイコンのサラダ。中にはカブのムース、ゴールデンキャビアとも言われる信濃雪マスの卵のカラスミ。
イトウのポアレ、ユズのピュレーとカブナのソースを添えて。淡水魚イトウが美しいソースで深い味わいに。

 ディナータイムのみ営業するユカワタンでは、清流を泳ぐ川魚や季節の野菜など、信州ならではの食材を使っている。あえてフランスの食材を使用しない、浜田統之シェフの提唱する「日本のフランス料理」が味わえるのだ。素材への愛情が生み出す味と美しく洗練された盛りつけ。その独創的な料理は、フランス料理の権威あるコンクール「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」の日本チームを率いて、総合3位、魚料理では1位を獲得した実力に裏打ちされたもの。

左:「その土地の限られた素材だからこそ料理に使って味わってもらいたい」と独創的な料理を生み出す浜田シェフの真剣な眼差し。
右:壁を飾るのは、ボキューズ・ドール国際料理コンクールの輝かしい成績。

 軽井沢の自然からインスピレーションを受け、白い皿に自然を映し出していきたいと語る浜田シェフの料理は、出て来る皿ごとに驚きと新鮮さの奥に深い味わいを感じる。

2014年11月にフランス・グレナ社より出版された『NORIYUKI HAMADA, RESTAURANT YUKAWATAN, KARUIZAWA JAPON』は、浜田シェフの美しい料理をまとめた一冊。日本の地方発の料理本はフランス出版界初。

 次回は、メインダイニングの日本料理「嘉助」の和食やエイジングケアを目指す料理、おこもりルームダイニングでのそば粉のガレットとブッフェが楽しめるブレックファストなど、「星のや 軽井沢」での食の楽しみをご紹介します。

※各メニューに関しては、入荷の状況次第で異なる食材を用いる可能性があります。

星のや 軽井沢

所在地 長野県軽井沢町星野
電話番号 050-3786-0066(星のや総合予約)
URL http://www.hoshinoyakaruizawa.com/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2015.01.10(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵