「使い物にならないオダギリさんの演技が秀逸(笑)」印象深いシーンは…

――特に印象深いシーンはどこでしたか?

 やっぱり、(有村)架純ちゃん演じる沙都子が刺されるところ。ここは本当に難しかった。あのわちゃわちゃ具合は声だけでもしっかり伝えたいけれど、そもそも3人が入り乱れる場面をすべて一人で演じなければいけないというハードルが……(笑)。

――沙都子の不倫相手の妻が、沙都子の部屋に乗り込んでくるんですよね。仕事終わり、塩辛をつまみにビールを飲みながら韓国ドラマを観ている沙都子は、ふと視線を感じる。顔をあげると、格子窓越しに無言でこちらを見ている女性の視線と行きあう。いろいろあってドアを開けてしまった沙都子は、突進してきたその女性に果物ナイフで脇腹を刺されてしまう……という、なんとも強烈なシーンです。

 説明すると怖いのですが、刺された架純ちゃんや、大慌てで駆けつけるもパニックになって使い物にならないオダギリさんの演技が秀逸で、実はかなりコミカルな場面なんです(笑)。架純ちゃんの振り切った「……いったああああ!」や救急車を呼ぼうとしたオダギリさんの「うわあ、(スマホの)充電がない!」という叫びはかなり笑ってしまうし、冷静になるとそれらを一人で読むのは結構恥ずかしいんですよね(笑)。
 もう一つ読んでいて楽しかったのは、中学生の聡子が同級生と新大久保にダブルデートに行く場面。これは映画にはないシーンなんですよ。

――中井聡子の親友・かなぶんが1つ歳上の彼氏・テルくんと新大久保デートに行くのに、なぜか聡子と、同じく親友の嶋っちょ、さらにテルくんの幼馴染の関くん(通称・関)がついていくことになり、ドン・キホーテをうろついたり、サムギョプサル店の店員さんにビビッてお店に入れなかったりするんですよね。

 そうそう(笑)。あれは完全に小説オリジナルでしたし、ノベライズではないからこそ映画の“裏設定”的に解釈できる場面も多くて面白かったです。

――いつものお芝居と朗読との違いや難しさはどこにあるのでしょうか?

 演じるという点ではどちらも同じなのですが、音声だけの作品というのは演じ手の姿が見えませんし、聴く方によって捉え方や浮かぶイメージが変わると思います。そこは難しさでもあり、魅力でもありますね。
 やはり私たち俳優は動いて芝居をしてきたので、動きがなかったり、一人で何役どころかすべての人物を演じたり、さらにはセリフ以外の地の文まで読むとなると……こればかりはこの先、何作経験したとしても難しいと感じるだろうなと思います。
 それに、朗読はあまり芝居がかり過ぎても聴く方が疲れてしまうと思うので、その塩梅も難しいですね。

娘ふたりの学費の支払いを終え、「家事卒業宣言」を。石田ひかりが踏み出した新たな人生

石田ひかり

東京都出身。1991年、大林宣彦監督による映画『ふたり』で映画初出演にして初主演を務める。翌1992年には連続テレビ小説『ひらり』(NHK)でヒロインに抜擢され国民的な人気を得る。その他、近年のドラマ出演作として、「きょうの猫村さん」(20/TX)、「続・続・最後から二番目の恋」(25/CX)、主演を務めた「鬼女の棲む家」(26/CTV・NTV)など、映画ではAmazon Original『HOMESTAY(ホームステイ)』(22)、『ブルーピリオド』(24)、『リライト』(25)、第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品『ルノワール』(25)など多数。

映画『さとこはいつも』大ヒット上映中!

監督・脚本:沖田修一
出演:有村架純、石田ひかり、姫野花春、青木柚、細田佳央太、鳴海唯、中村優子、古舘寛治/吉田羊、オダギリジョー、筒井道隆ほか
音楽:柴田聡子/主題歌:折坂悠太“シミレ(feat. 柴田聡子)”
製作幹事:アミューズクリエイティブスタジオ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
©2026「さとこはいつも」製作委員会

オーディオブック『さとこはいつも

Audibleにて配信中
著者:沖田修一
ナレーター:石田ひかり
https://www.audible.co.jp/pd/B0HJRNMRDQ

さとこはいつも

2026年8月21日
定価 1980円(税込)
文藝春秋
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次の記事に続く 娘ふたりの学費の支払いを終え、「家事卒業宣言」を。石田...