沖田修一監督の最新作『さとこはいつも』で、3人の主演のうちの一人を務めた石田ひかりさん。自身も娘2人を持つ石田さんが、「監督が私に当て書きしてくださったのかと思った」と言うほどに共感した55歳の専業主婦・飯島里子を演じるにあたって込めた想いや、今作が2度目の挑戦となる“声のお芝居”について、さらには「家事卒業宣言」をしたというプライベートまで……たっぷりお話を伺いました。

娘ふたりの学費の支払いを終え、「家事卒業宣言」を。石田ひかりが踏み出した新たな人生


「“本家”に敵うはずもない」けれど…

――『さとこはいつも』は映画にとどまらず、監督ご自身が書き下ろした小説も刊行されています。小説のオーディオブック化にあたり、映画とは別に、石田さんが7時間にわたり全編を朗読されました。(10/9よりAmazonオーディブル 以下、Audibleにて配信中)

 私はもう長らく沖田監督の大ファンなんです。鑑賞後、観た人が日々の生活を愛おしく感じられるようになるのが監督の作品の持ち味だと思うのですが、今作の根底にもそんな空気がずっと流れていて……。監督らしく、優しさが全面に滲み出た素晴らしいものでした。

――映画には、3人の「さとこ」という名の女性の日常が描かれます。新人俳優の姫野花春さん演じる15歳の中井聡子、有村架純さん演じる35歳の西田沙都子、そして石田さんが演じられたのが55歳の飯島里子でした。

 中学生の聡子は初恋を知り、OLの沙都子は不倫をこじらせ、そして私の演じた専業主婦の里子は子育てに区切りをつけ、昔抱いた夢をふたたび追う。3人は別々の人間なのですが、本当は一人なのではないかと錯覚してしまう作りにもなっています。そこが面白くもあり、一人ひとりすべての人の人生を肯定してくれる温かさを持つ作品でした。

――映画では他の方が演じている場面を、朗読に形を変えてご自身で演じる機会はなかなかないかと思いますが、いかがでしたか?

 この作品自体が本当に大好きなので、自分の演じていない人物のセリフを言えることはとても楽しみでした。でもいざやってみると“本家”に敵うはずもないし、現場では実際にほかの俳優さんたちの演技を目の当たりにしていたので、それが大きな支えになるとともに、やはり引っ張られてしまうこともあって非常に苦労しました。

 とはいえ、同時に「(吉田羊さん演じる)寺尾先生はこういう気持ちで聡子に作文ノートを勧めたんだ」とか、「沙都子と(オダギリジョーさん演じる)不倫相手・村本にはこんなに楽しい時間があったのね」などと役を深めていけたことがとても良かった。もう映画の撮影が終わってしまったことが悔やまれもしましたが、同じ作品に、もう一度別の形で携わることができたのは貴重な経験でした。

 普通、撮影の現場ではほかの人のセリフは言いませんから。それをこんなに堂々と言っていいんだ、という(笑)。

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