「そんなわけないだろ。卒業以来会ってないんだし」

「今回、同窓会の案内を出したら訊かれたんだよね。窪田くんって今、消防士なんだよね、窪田くんは来るのって」

 とん、と小さく心臓が()ねる。

「ね? 意識してなきゃそんなこと訊かないでしょ?」

 高松は目を弓のように細めた。

「いいじゃん、元サヤに戻っちゃえば」

「やめろって」

「あ、子持ちはイヤ?」

「そういうんじゃないけど……」

「なら、とにかく話しかけてきなよ。せっかくの同窓会なんだから」

 高松に背中を押されて、窪田はよろめくようにして河原の上を数歩進む。

 今の話が聞こえていたんじゃないかと黒川を見たが、黒川はこちらに背を向けたままだった。娘と並んでしゃがみ込み、石を指さして何かを話している。

 何となく辺りを見渡すと、ちょうど食べるのが一段落ついてきた頃なのか、三台のバーベキューコンロとテントの周りには、ポツポツと人が出てきていた。自撮りをしているグループ、缶ビールを片手に立ち話をしている人の輪、浅瀬ではしゃぐ子どもたち。泳いだらさぞ気持ちいいだろうと思うような陽気だが、少し離れると急に深くなるためか本格的に入っている人はいない。それでも、高校生の頃だったら誰かがふざけて岩場から飛び込んでいただろうなと思うと、自分たちはもう二十六歳なのだという事実が浮かび上がってくる気がした。

 黒川が足元から石を一つ拾い上げ、娘に見せる。娘は「わあ、きれい!」と歓声を上げて地面に飛びついた。そのまましばらく()いつくばっていたが、思ったような石が見つからなかったのか、「ママばっかりずるい!」と頰を膨らませて地団駄(じだんだ)を踏み始める。

「ユキ、これあげるよ」

「いらない!」

「もっとあっちの方を探してみる?」

「ママなんかきらい!」

 頭から湯気が出そうな勢いで腹を立てている様子に、窪田は口元を緩めた。見た目は黒川のミニチュア版のようにそっくりだが、中身は黒川と違ってかなり気が強く、感情表現が豊かなタイプらしい。

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