――あの後に生まれた子どもが、もう四歳なのか。

 窪田は、今度は横目で黒川を見た。

 ()()ぐに伸びた背筋と華奢(きゃしゃ)()で肩、細い首は記憶のままなのに、頰のそばかすが化粧で隠されているだけで、まったくの別人を目にしているような落ち着かない気持ちになる。

 黒川がふいにこちらを向いた。目が合うより一瞬早く、窪田は顔を()らしてしまう。テーブルに置かれていた紙皿をつかみ、半分焦げたソーセージにかじりついた。

「焼きそばできたよー」バーベキューコンロの前で幹事の高松(たかまつ)が声を張り上げる。

 窪田が振り向きかけたところで、

「今日の同窓会、あの子は来ないと思った」

 在学中、黒川と同じ図書委員だったはずの野本(のもと)がつぶやくような声音で言った。

「ほんと、よく来られたよね」

 別の女子が相槌(あいづち)を打つ。その響きが揶揄(やゆ)するというよりも案じているようだったからこそ、窪田はこの場を立ち去りたくなった。輪を離れるきっかけを作るためにウーロン茶の入った紙コップを空にしたが、やはり何も言わずに立ち去る気にはなれずに「来たら悪いのかよ」と口にする。

「え?」

「いい歳して陰口とかやめろよ」

 低く言い捨ててプラスチック製の丸テーブルを離れ、そのまま大股でバーベキューコンロに向かった。

「高松さん、焼きそば頂戴(ちょうだい)

 声をかけると、高松は「はいよー」と威勢よく言ってトングで焼きそばを挟み上げ、窪田の紙皿に盛りつける。それから顔を上げ、「あ、窪田じゃん」と今さら気づいたように言った。

「やだ、久しぶりー元気?」

「おかげさまで」

「うわ、全然変わってない!」

 きゃはは、とはしゃぐような笑い声を上げて、窪田の肩をトングを持った手で叩く。

「窪田って大人びてんなーってあの頃思ってたけど、大人になっても大人びてんだね」

「何だよ、それ」

「ほら、それ! その苦笑いめっちゃ懐かしい」

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