デビュー当時は全国の大型キャバレーを巡り…
近田 結局、デビュー曲はどのぐらい売れたわけ?
小柳 オリコンで12週間にわたって首位に立ち続け、160万枚を売り上げました。
近田 あの頃の歌手って、プロモーションのために、いろんな場所に営業に行ったもんだよね。
小柳 私も、デビュー当時は全国の大型キャバレーを回ったもんですよ。キャバレーなのに立ち見が出ちゃって、もうパンパンで。
近田 まだ20歳前の未成年の頃でしょ? 昔のアイドルは大変だったねえ。今じゃ考えられないよ。
小柳 あの頃のキャバレーって、それぞれの店に専属のバンドがいるわけです。
近田 いわゆるハコバンってやつね。俺も若い頃、銀座の店でやったことがあるよ。
小柳 地方のハコバンのミュージシャンって、アンチ東京の意識が強くって、東京から来た歌手に対して意地悪するんですよ。「東京から来た18、19の小娘の伴奏なんて、冗談じゃねえよ」って態度が露骨に伝わってくる。あの当時のバンドマンって、もともとジャズやクラシックの畑の人が多いから、プライドが高いんですよね。
近田 そうなんだよ。意地悪って、具体的には、どんな目に遭ったの?
小柳 音合わせをすると、わざとミストーンしまくるわけ。
近田 ああ、間違った音を出すわけね。
小柳 でも、私は子どもの頃からピアノを習っていたし、宝塚音楽学校でも勉強していて、譜面が読めるから、「あっ、今、間違えましたよね。ドを吹かれましたけど、ここ、シですよ」とか指摘するわけですよ。
近田 「こいつ、できるぞ」って思うよね。
小柳 譜面を見ながら、「ここはポコリットで」とか、「このダルセーニョはこの小節まで帰ります」とか言うと、みんなニコニコしちゃって、一目置いてくれるようになって、途端に音が変わるんです。
近田 その様子、ものすごく鮮明に目に浮かぶよ(笑)。
小柳 レコーディングの時も、私は、用意された譜面を読めばすぐ初見で歌えるから、「ルミ子は本当にスタジオ代がかからなくって助かるよ」って喜ばれました。
