動画が拡散も……群れのルールを覚えている最中

 3月末、同園まで足を運ぶと、ひときわ小さいニホンザルが元気に動き回る姿が。すぐに、それがパンチくんだとわかります。

 オランウータンのぬいぐるみと一緒に過ごす時間は少なくなっているそうで、この日も放飼場に設置された遊具で無邪気に遊んだり、歳の近そうな仲間と一緒にいたりと、群れに馴染みつつあることを実感しました。

「パンチは今、群れのいろんなルールを覚えている最中です。その中で我々が気をつけているのは、群れに馴染もうとしているパンチにとってよくないことが起こらないようにすること。例えば、怯えてしまうような出来事が繰り返されると群れに馴染めなくなってしまいます。

 ニホンザルの群れは一番強いアルファオスを筆頭に複数のオスとメスで成り立ち、それぞれの順位が明確に決まっています。強いメスに生まれた子は強い順位になりますし、弱い場合も然りです。強い個体に対して何かをしてしまった時、弱い個体はすみません! みたいな表情をしたり、鳴いて自分は弱い立場であることを相手にわからせようとします。

 また、体の後ろ側に乗るマウントという行為は、本来、強い個体が弱い個体にすることなんですが、パンチはほかの個体にお馬さんのように乗ってしまうことがありました。今は赤ちゃんなので許してもらえていますが、許容範囲の狭い個体にそうしてしまうと怒られるのは当たり前のことです。

 その辺りは今後、サル山の群れで生きるためにルールとして覚えていかないといけないことなので、我々も試行錯誤しながら見守っているところです」(飼育担当者)

 2月中旬、パンチくんが大人のサルに引きずられているように見える動画が拡散されました。動画は国内だけでなく海外にまで拡散され、「かわいそう」などさまざまな声が挙がることとなりました。

「あのようなことが起こったのは、先ほどお話ししたようにパンチがニホンザル社会のルールをきちんと理解していなかったためです。もちろん、パンチに罪はありませんし、怒った大人のサルにも罪はありません。大人のサルたちはパンチだけにああいう態度を取っているわけではなく、ルールに従ってそうしただけなんです。

 ただ、動物園では限られた環境でしか飼育できず、自然のように逃げ場がありません。そのため、激しすぎるしつけによってパンチが群れに入るのを怖がるようになれば、群れのルールを学習する機会を失ってしまいます。

 時には順位の高い個体から手を出されることもあったため、そのようなときは一時的に複数の個体を隔離するという措置を行ったりしましたが、大人の個体がパンチにしていることは人間で言うところのいじめや虐待ではなく、ニホンザルとして群れで暮らすために必要なことなんです」(飼育担当者)

» 【続きを読む】「パンチくんがかわいそう…」世界的な人気の裏で批判や炎上も。それでも飼育員がブレずに語り続けるニホンザル・パンチの“本当の幸せ” を読む
» この記事の写真をもっと見る

市川市動植物園

所在地 千葉県市川市大町284番地1
https://www.city.ichikawa.lg.jp/site/zoo/

次の記事に続く 「パンチくんがかわいそう…」世界的な人気の裏で批判や炎...