難病にかかった愛猫のために始めた猫陶器づくり
赤水窯といえば猫をモチーフにした陶器で知られますが、その背景には、今は亡き黒猫ポンタとの深い物語がありました。
「先代猫のポンタは扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)という、徐々に顔が変形していく難病を患っていました。治療には高額な費用がかかるといわれ、少しでも足しになればと、ポンタをモチーフに黒猫の陶器をつくったのが猫陶器の始まりです」
当初、黒猫シリーズは箸置のみでしたが、猫好きのお客さんからのリクエストを受け、マグネットやブローチへと展開。そこから、今では赤水窯を代表する作品になったカラフルな「掛け分け印花皿」の誕生へとつながりました。
約1年の闘病生活を経て、ポンタは19歳で生涯を閉じますが、その後も猫陶器づくりは象さんの大切なライフワークのひとつに。その売り上げは、いまも赤水窯の猫たちの暮らしを支え続けています。
猫にちなんだ器の中で、唯一、猫用につくられたのがフードボウル。もともとは、初代店長の創平くんのために1点だけ制作した特別なものでした。
「王様のような存在だった創平にちなんで、“おうさま猫のためのフードディッシュ”と名付けました。鼻の低いブリティッシュショートヘアに合わせて、あえて平らなお皿にし、縁の立ち上がりにはわずかな“返し”を施して、食事中もごはんがこぼれにくいよう工夫しています。今は年に一度、京都の『たち吉』で猫の日に合わせて開催されるオンライン企画展にのみ出品しています」
猫愛から生まれた唐津焼のフードボウルは香平くんにも引き継がれ、ご機嫌なお食事タイムを演出。その姿はほのぼのとしていながら、どこか気品が漂い、“王様”の風格もしっかりと受け継がれています。
