それぞれに個性的な天草陶器のギャラリー

丸尾焼

丸尾焼のギャラリー。庭を挟んで向こう側が工房。気になるカップを見つけてコーヒータイム。
美術館のような店内には、モダンな作品が多数並ぶ。観光客でも気軽に入れる雰囲気。

「丸尾焼」は、1845年開窯と歴史が長い窯元。開放的でモダンなショップには、「うちのダイニングで使ってみたいな」と想像をかきたてられる、素敵な食器がずらり。一角にはカフェコーナーも設けられていて、好きな陶器のカップを選んでコーヒーを飲むのも大歓迎。中庭を挟んで工房を見渡す気持ちのいいテラス席といい、カフェコーナーといい、歴史は古いけれど堅苦しさを感じさせない、とても居心地のいい空間だ。

「天草陶磁器は、大きく産業化されなくても、アンダーグラウンドのメッカになればいいと思ってますよ」。金澤さんの、その独特の世界観も魅力的。

 四代目が日常の暮らしに密着した陶器作りの路線を定着させ、現在は生活空間を豊かにする陶器の可能性を追求している丸尾焼。現五代目当主は、金澤一弘さん。「天草陶磁器には、コレという共通項がない。でも、これじゃなきゃだめなんて言ってたら、島では文化が途絶えてしまいますよ。多様性が常に新しい時代を築いてきたんです」。会話をしていると、グローバリズムから日本史から天草のキリシタンまで、興味深い話が次々に飛び出す。金澤さんは若手育成にも尽力し、ここから多くの若い陶芸家が巣立っている。

丸尾焼
所在地 熊本県天草市北原町3-10
電話番号 0969-23-9522
開館時間 10:00~18:30
定休日 無休
URL http://www.maruoyaki.com/

山の口焼

山の口焼のコンテナの左半分はギャラリー、右半分はカフェ。見落としてしまいそうな建物だけど、中はとても素敵な空間。
こちらはカフェスペース。窓際のカウンターの外には庭が。雨の日も、窓の外の緑が美しくてほっと和む。

 コンテナを改装した建物の半分は、陶芸家・辻口康夫さんの作品を展示するギャラリー、半分は奥様が切り盛りするカフェ、テラスには、庭を眺めるカフェテーブル。もともとは、「山の口焼、こんな使い方もできますよ」という提案から、ギャラリーにカフェを併設することになったのだそう。料理もヘルシーでおいしいことから、たちまち人気のカフェに。もちろん、カフェで使う陶器は、すべて山の口焼。

「その時々の暮らしに溶け込む、普段使いのモノ造りを続けていきたい」という辻口さんの思いが伝わるようなギャラリー。晴れた日はテラス席で過ごすのも気持ちいい。
「山の口焼」という屋号は、焼き物職人だったお祖父さまから継いだもの。カフェのテーブルコーディネートも参考になりそう。

 辻口さんが作る器は、シンプルだけどどこか温かみがあるものばかり。ときには、ご本人が山で掘ってきた土で作ったボウルが並ぶことも。ロケーションは、中心街からはそう遠くないものの、少し森の中に入ったような、自然豊かな環境。温かな陶器に触れてゆっくりとくつろぐ時間が過ごせそうだ。

山の口焼
所在地 熊本県天草市本渡町本渡1755-3
電話番号 0969-24-2072
開館時間 9:00~18:00(カフェ「山の口食堂」は11:30~14:00)
定休日 日曜、祝日

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2014.06.28(土)
文=芹澤和美