メイン会場は昔ながらの旧市街

メイン会場となる「近江八幡エリア」は、12会場で作品が展示されています。例えば、酒蔵をリノベーションした複合施設「まちや倶楽部」や、江戸中期から後期に建てられたと言われる商家の家「藤ya」、近江牛で有名なカネ吉山本が所有する町家「カネ吉別邸」など、近江商人ゆかりの地だからこその歴史を重ねた味わいと、それぞれが独自の個性を備えた会場自体も見どころです。

各会場に展示される作品は、例えば、江頭誠による日本で独自に生産されてきた花柄の毛布を素材に使った大型立体作品や、フランスで彫刻家として活躍するジュニアン・シニョレの作品など、いずれも強烈に印象に残るものばかり。

多彩なアート作品が、現代の住居とは異なる間取りや光と陰が生み出す陰翳礼讃の世界と融合することによって、すべてがインスタレーションのような、その場所だからこその表現になっていて見応えたっぷりです。
長命寺で初めての開催が実現

そして、11回目となる「BIWAKOビエンナーレ」の歴史の中で、今回初めての開催となる場所が、「長命寺エリア」になります。近江八幡市の北西端にある長命寺山の標高およそ250mの山腹にあり、808段とも言われる階段を上ることで辿り着けます。
境内には美しい本堂や三重塔などがあり、眼下には琵琶湖の絶景も望めるなど、長命寺はお寺としても見どころ満載。

この長命寺では、石川雷太、宇野裕美、陳⾒⾮の3名のアーティストの作品を鑑賞することができます。石川は借景としての作品を屋外に展示、宇野はストレッチ布を使った作品を建物内外に展開、陳は杭州の雷峰塔をモチーフとした作品を本堂に展⽰しています。
歴史的にも精神的にも重層性をあわせもつ長命寺と現代アートとの新たな対話を感じてみてください。

さらにこの「長命寺エリア」にはエクステンション会場も用意されています。会場は琵琶湖を一望できる「369Terrace Cafe」で、そのテラスに石川雷太の作品が横並びで展示されています。琵琶湖の借景とともに作品のメッセージや、Cafeのお茶を楽しめる特別な展示をお見逃しなく。
琵琶湖内の沖島も会場に

ロケーションとしてほかの芸術祭と一線を画す会場が「沖島エリア」です。沖島は日本で唯一であり、世界でも珍しい淡水湖の中にある有人島です。

島内には飯島剛宗、田中太賀志、藤原昌樹、周逸喬の4名のアーティストの作品が点在しています。中国の祝祭的な絵柄や色調をモチーフにした周のバルーン作品や、「生命力」をテーマに目に見えない事象を造形化した田中の作品などが、自然と共生する暮らしの中に溶け込むように展示され、島ならではの風景をより印象深いものにしています。
2025.10.12(日)
文・写真=石川博也