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演じていくうちに、どんどん“妻”に共感!

――主演が決まったとき、どんなお気持ちでしたか?

 最初は不安もありました。これまでだったら、台本を読み込んでキャラクターを掘り下げて……といった役作りをしっかりしていたんですが、今回はそれが違って。妻という役は、作り込むよりも現場の空気の中で生まれるものを大事にしたほうがいいんじゃないかと思ったんです。

――演じられた“妻役”と、ご自身と似ている部分はありますか?

 最初は全然似てないなって思っていました。夫に対して強く言うシーンとか、「なんでこんな冷たくするの?」って不思議だったんです。でも演じていくうちに、「あれ? わかるかも……」って(笑)。いまでは「私そのものなんじゃないか?」って思うくらい共感できるようになりました。

――どんなところで特にそう感じましたか?

 冒頭で、自分が勝手に不機嫌になって、夫に冷たく接してしまうシーンがあるんです。最初は「別に話しかけられたら返事すればいいのに」って思っていたんですけど、演じていくうちに、「あ~、こうなっちゃうの、わかる……」って。これってたぶん、夫に対する甘えとか、信頼があるからこそなんですよね。

 ほかの人には絶対しないと思うけど、夫だからこそ出てくる感情で。そういうのがリアルに描かれていて、演じていくうちにどんどん共感が増えていきました。

――ナチュラルなお芝居が求められる作品ですよね。役作りというより、“空気感”をつかむことでしょうか?

 そうなんです。だから最初は私でちゃんと伝えられるかなって不安でした。作品の魅力が“静かな幸せ”だったり、“繊細な感情”だったりするので、大げさなことはしない分、伝え方が難しいんじゃないかと思って。現場に入るまでは結構悩みました。

2025.09.30(火)
文=大嶋律子(Giraffe)
写真=杉山秀樹
スタイリスト=櫻井かおり
ヘアメイク=吉田真佐美