モータースポーツ初心者でも迷子にならない
見どころはレースシーンだけではない。マシンの開発からチームスタッフの仕事ぶり、シミュレーターを使った訓練模様など舞台裏もしっかり描写されている。日本やヨーロッパでは人気の高いF1だが、インディや量産車ベースのNASCARが浸透しているアメリカでの人気は今ひとつ。“カーキチ”ブラッカイマーも本作を製作するまでF1にあまり興味がなかったと語っている。
そんな観客のために劇中ではルールや組織構成を含めてF1の概要をこと細かく紹介。実話の映画化『グランツーリスモ』(23年)でもドライバーを取り巻く環境が描かれていたが、本作はより踏み込んだ内容になっている。ただし、モータースポーツ初心者でも迷子にならないようさりげなく(ここが大事)配慮もされている。

もちろんブラッカイマー作品なので映画の作りはド直球のエンタメ作。流れ者が大活躍する西部劇風の枠組みに、師弟の絆やロマンス、悪党退治まで盛り込んだ痛快作に仕上げている。近年は『ラッシュ/プライドと友情』(13年)や『フォードvsフェラーリ』(19年)、『フェラーリ』(23年)などリアルな描写に重厚な人間ドラマを加えたレース映画が列ぶが、後者をエンタメに振り切った本作はこのジャンルの起爆剤になるのでは、と期待する次第である。
INTRODUCTION
空を舞台に圧倒的な映像を見せつけた『トップガン マーヴェリック』(22年)の製作チームが、今度は地上最速の世界を再現! しかも世界チャンピオン経験のあるレーサー、ルイス・ハミルトンがエグゼクティブ・プロデューサーを務めるなど、現在のF1に関わる人々が全面バックアップした超リアルなド迫力映像が繰り広げられる。『フォードvsフェラーリ』(19年)など、進化を続けるレース映画の世界に、また新たな伝説が加わる。
STORY
90年代に期待を集めたF1レーサーだったソニー(ブラッド・ピット)は、かつてのチームメイトで最弱F1チームの代表・ルーベン(ハビエル・バルデム)の誘いで現役復帰。同じチームの若きルーキードライバーのジョシュア(ダムソン・イドリス)らはソニーの破天荒な言動に困惑するが、彼の存在がチームに光を与えていき……。
STAFF & CAST監督:ジョセフ・コシンスキー/出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン/2025年/アメリカ/155分/配給:ワーナー・ブラザース映画/©2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

2025.07.06(日)
文=神武団四郎