ガジェット感のある展示の魅力

 訪れた際には、その展示作法にも注目いただきたい。アートディレクションは三澤遥さんだ。

 「三澤さんには丁寧で工夫あるディレクションを行っていただきました。たとえば真っ白なエアコンは室内の雰囲気に合わせてリペイントしていますし、暖炉上の棚は当初からあったように造作されました。既設品と違和感のないようテーブルに手を加えて、中から歌声が聞こえるよう仕掛けも施していただいています」と谷本さん。

 さらに、展示物に目を近づけても影が出にくいライティングや、音楽に合わせて踊る紙人形、高校時代に組んでいたバンドの音源が聞こえてくる小箱など。これらの展示物に込められたポジティブな引っ掛かりが、展示を楽しむ人を惹きつけ、楽しませ、驚かせている。

 古風な窓から自然光が差し込むこともまた、昨今の展覧会ではまれなシチュエーションと言える。まずもって気持ちがいいし、窓からのぞく蔦や緑のさわやかな光景にはもはや、豊島区池袋の面影はない。

2025.06.05(木)
文=前田賢紀
写真=志水 隆